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②迅が不機嫌なんですけど ─雷─2

 なんだかなぁ。  ぶつくさ言いながらも俺に毎日おやつくれて、初日以降は飲み物まで買ってきてくれるから変なのーとは思ってんだけどな。  迅の事も、翼の事も、なんだかんだで俺は何も知らないや。 「雷にゃんには俺が居るだろ? あ、てか明日の放課後合コン決まったんだ。 雷にゃん来る?」 「え! 行く行く! てか合コンってさ、それ楽しいっ? 俺初めて!」 「えっ?」 「は?」 「…………ん? なに?」  足をバタバタさせて興奮した俺に対し、二人ともに変な顔をされた。  だって俺、合コンって行った事ないんだ。  引っ越してくる前も当然行った事がなくて、でもみんなは行ってるって知ってたから、それには身長制限みたいなのがあるのかと思ってた。  男女の出会いの場?くらいの知識はあっても、具体的に何をするのか知らねぇ。  それっていうのも、向こうでは、俺には尊敬する先輩が居てその先輩からストップかけられてたんだ……俺には相応しくない場所だってな。 「あ、あれ……? この空気なんだ……?」  ニヤけたツラが得意なエロピアス翼も真顔で、メロンパンを持った迅を振り返っても真顔。 あ、迅はいつもの事か。  合コンってそんなメジャーなイベントなの??  こんなに二人がシーンってなるくらい?? 「雷にゃん初合コンなんだ? 意外ー」 「えっ? えっ? てか俺行っていいのか? 身長制限とかあるんじゃねぇの?」 「ぶっ……! 無ぇよ、そんなの」 「マジで!?」  背後からレアな笑い声がしたから振り向いてみたけど、迅はメロンパンで自分の顔を隠していた。  王様迅様がここまで笑うくらい、俺は常識ハズレなこと言っちゃってんのか。  イジってたスマホをとうとうポケットにしまった翼も、興味津々な感じで前のめりだ。 「なんで身長制限あると思ったんだ? 雷にゃんみたいな陽キャは毎週……何なら毎日やっててもおかしくねぇだろ。 前のガッコで誘われなかったのか?」 「あー、うん。 俺には合コンってものは相応しくないから、先輩がダメだって」 「…………先輩?」  正直に答えた瞬間、後ろからニュッと伸びてきた手のひらで顎を掴まれて、強引に迅の方を向かされる。  馬鹿力で、しかもいきなりだったから変な音鳴ったじゃん! 「痛てぇ痛てぇ! 迅! 俺の首はオモチャじゃねぇよ!」 「先輩って?」 「手を離せっつの! グキッて鳴ったんだけど!」 「雷にゃん、その話詳しく」 「はぁっ!?」  たった今激レアな笑い声を上げてたとは思えないくらい、そばにあった迅の顔が怒っていた。  手を離してくれたのはいいけど、ダチじゃなかったら逃げてるよ。 こんな般若顔。  そして俺のおやつであるメロンパンは後回し的に、ぽいっと机に置かれた。 「いや、だからぁ、合コン誘われてた時もあったんだよ、俺だって。 でも先輩に報告する義務があって、行っちゃいけないって言われてたんだ。 「俺に黙って行ったらぶん殴るぞー」みたいな」 「うわ〜〜。 何その縛り」 「………………」 「他にもあったぞ? みんながバイクとか乗り回して夜遊びしてる時も、俺は行っちゃダメだったし。 あとはバイトもダメで、夜遊びもダメで、誰かと付き合うのもダメで、……」 「…………は? なんで先輩がそこまで雷にゃんの生活を制限してんの?」  えぇ……そんな事言われても。  理解できないって文字が顔に書いてある翼と迅が、交代で追及してくる。  そんなに変なのかなぁ? ……や、やっぱおかしいのか?  最初は俺も、先輩から嫌われててハブかれてるんだと思ってた。  でもそうじゃないと分かった一件があってから、俺は先輩の言う通りにしてたってだけだ。 「知らねぇよっ。 俺はその先輩のことガチで尊敬してたからさ、先輩の言うこと聞いてたら間違いねぇって。 でもまぁ……実は一個だけ、先輩の目の届かないとこに来てホッとしてる。 だって先輩の門限が七時だったんだぜ? 七時なんて野良猫と遊んでたらあっという間なんだよ」  参っちゃうよなぁ、とぼやいてメロンパンをかじろうとした俺は、迅と翼の雰囲気が重たい事に気付かなかった。  特に後ろから聞こえる低い声は謎でしかない。  「は? 何だよそれ。 は? 意味分かんねぇ」って、俺の方が意味分かんねぇっての。  そんな事はどうでもいいから、早くメロンパン寄越せ。

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