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②迅が不機嫌なんですけど ─雷─10※
「ンンッ───!」
「は? ウソだろ、お前……。 俺握っただけだぞ」
「……はぁ、はぁ……っ」
あーそうですよっ。
迅のあったかーい手のひらで直にぎゅむっと握られた瞬間、頭ん中にキラキラが飛び散りましたよっ。
誤解を招いたらヤだから、盛大に否定しておきたい。
俺、普段はこんなに早くねぇ。
どんなトリック使ったのか知らねぇけど、いたいけな俺の分身に、テクニシャンな迅が一瞬で何か仕掛けやがったんだ。 絶対そうだ。
「……うぅぅ〜〜!! 恥ずい! 死にてぇ!」
「いや待て。 まだ萎えてねぇからもう一回くらい出せそう」
「迅がまだ握ってるからだろ!」
「雷にゃん声抑えろ。 さっきからデケェ声で色々言ってるけど、親父は下で寝てんだからな?」
「ハッ……!」
ここが迅の実家だって事、すっかり忘れてた。
慌てて口を塞いだ俺の股間は、ちなみにまだ迅の手中にある。
ほんとにイった?ってくらい自分でも呆気なくTシャツを汚した性器が、あんまり萎えてない。
だからって? イった直後の敏感な男のシンボルをふにふに弄ぶのはよくないんじゃねぇか、迅様?
「一回目だから量多かったな。 しかも結構飛んでる。 やるじゃん」
「んっ……ん、ッ……迅……っ、お前……ッ」
「なんだよ。 童貞男子」
「うるっせぇ……! あっ……ヤバ、ッ……!」
「もう? スパン早えな。 これで萎えなかったら童貞絶倫認定してやるよ」
「ふ、不名誉……ッッ! あ……っ♡」
全然離す気配がない迅は、「扱きにくい」って言いながら俺の背中をグイッと抱いて、密着するよう無言で求めてきた。
サラッとそんな事をする迅には、もう貰い過ぎてるかもしんねぇけどヤリチン認定してやる。
背中もアソコも、迅と触れ合ってるとこぜんぶが熱いんだけどどうしたらいい?
ふにふにすんのやめろって、言いたいのに言えない。
気持ちいいから。 やめてほしいくないから。
自分でするのとは全然違うんだ。
迅の手のひらは大きいから、握ったらすっぽり収まっちまう俺のお粗末なナニが喜んでんだ。
しかも何?
耳に吐息を吹きかけて、誰かさんみたいにかぷっと甘噛みして、しまいにはぺろっと舐めてきやがった。
「ふっ……っ……んっ……んっ♡」
「マジで耳弱えな、雷にゃん」
「弱く、ない……ッ! ちゃんと、聞こえて、る……!」
「意味が違ぇよ」
キラキラが近い。
テクニシャンな迅の手のひらが動く度に、AVの中でしか聞いた事がないようなくちゅくちゅって音がする。
恥ずかしいのに……これ一体全体どういう状況?って疑問でいっぱいなのに……童貞男子は初めての刺激に弱い。
とにかく、めちゃめちゃ気持ちいい。
どこに置いてたらいいか分かんなかった両手が、自然と迅のTシャツを掴んで引き寄せちまってもしょうがねぇと思う。
「雷にゃん、……イきそ?」
だから耳元で囁くのやめろっつーの!!
イケメンな迅は声までもれなくイケボなんだ! 自覚してくれ!
……心の中だけは威勢が良かった。
実際俺の口からはハートマーク付きの吐息しか漏らせなくて、迅のシャツがしわくちゃになるくらい握って、こんなとこ見せたくないのに情けなく項垂れて……。
「うん、うん……っ、もう、出る、っ……出る……っ! 迅〜〜……ッ」
聞こえてくる "くちゅくちゅ"が "ぐちゅぐちゅ" に変わった時にはもう、腹の下に集まった熱っぽさは止められなかった。
扱く手付きも力加減も絶妙で、人差し指で亀頭をぷちゅっと潰されて精液を搾られたら、降参しか無いだろ。
「はぁ……、はぁ……、……」
さっきよりたくさん、頭ん中でチカチカが光ってる。
目が開けられない。
力が入んねぇから迅の胸を借りて、いっぱい深呼吸してみる。
ティッシュでサササッと後始末した迅が、ずっと俺の背中擦ってくれてるから文句は言ってやらなかった。
「なんで最後、俺の名前呼んだの」
「…………分かんねぇ。 俺はどうせ童貞男子だから……ヤリチンなお前には理解不能な生き物なんだ」
「そう自分を下げてやんなよ。 二回もイけて良かったじゃん。 さすがに萎えてるけどな」
「ふぇぇ……うぅぅ……っ」
「は? ちょ、っ……泣くなよ雷にゃん。 何の涙なんだよ。 そんなイヤだった?」
なんの涙だぁぁ!? 分かれよ鈍感ヤリチンバカ!
しつこいようだけど俺は童貞男子なんだよ!
強制的にAV観せられておっ勃てて、ダチに二回もイかされたらそりゃ、悲しくもねぇのに涙ポロポロだよ!
「うわぁぁんっっ! 恥ずか死ぬぅぅ……!」
「………………」
「こんなのムリ! 俺にはダチ同士でヌきっこ大会なんか出来ねぇよ!」
「……それ、俺が相手でもイヤって事?」
「当たり前だろ! ダチなんだから!」
「へぇ……」
「な、なんだよっ、なんでそんな睨むんだよ!」
「あのさぁ……考えてもみろよ。 一回見ちまったもんは二回も三回も変わんなくね? 初体験は誰でも恥ずか死ぬもんだ。 その点、俺は雷にゃんのコレ握って、扱いて、イかせたんだぞ。 二回も」
ま、まぁ……そう言われればそうかもしれないけど……とブツクサ言いながら俺は、一回目の発射で汚しちまったTシャツを脱いだ。
半裸にクーラーの冷たい風を直接浴びて、ハッと気付く。
───ん? ってことは、恥ずかしかったのは俺だけじゃねぇのかな?
「迅も今、……恥ずかしかった?」
「なんで俺が」
「エッチな雰囲気だったじゃん。 だってなんか……迅、俺の耳……舐めてきたし」
「あぁ……」
「一瞬ちゅーされんのかって焦ったんだぞ」
「童貞男子のファーストキスを予告なく奪うはずねぇだろ」
「はぁ? キスならいっぱいした事あるし! なんならついこの間もしたし!」
「あ? 何それ。 誰と?」
「誰って……。 言いたくない」
「…………あっそ」
失礼な。 俺だってちゅーくらいならたくさんしてるわ。
それは対人間じゃないけど、そんなこと言ったらこのおっかないツラで絶対俺をバカにする。
言うもんかと唇を尖らせた俺に、迅は自分が着てるTシャツをペッと投げて、半裸のままさっさとベッドに横たわった。
「迅っ! なんでそんな不機嫌なってんだよ!」
「なってねぇよ」
「なぁなぁ、迅ってば!」
「うるせぇ。 二回も抜いてスッキリしたろーが。 とっとと寝ろ」
「〜〜〜〜ッッ」
つい三分前までのエロエロな雰囲気はどこにいったんだ。
素っ気ない迅が、俺に背中を向けて嫌味しか言わなくなった。 なんでそんなにすぐ不機嫌になれるのか、俺にはさっぱり分かんねぇ。
難しい男だ。
迅が寄越してくれたTシャツを着て、俺も迅と背中合わせに横になる。
いつの間にか真っ暗になったテレビに、唇を尖らせた俺の顔が映っていた。
……はぁ、寝よ寝よ。 確かに二回も出してぐったりだからよく眠れそうだ。
とにかく、もう、こんな破廉恥エロエロヌきっこ大会なんか二度とゴメンだよ。
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