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④監視が強化されたんですけど ─雷─6
迅に束バッキーの自覚があろうが無かろうが、俺には関係無え。
ちょっと……いや、かなり関係あるのかもしんねぇけど、先輩とは引っ越して以来一回も会ってなくて、ほんとに久しぶりなんだからそんな一刀両断するなよな。
「とにかく土日は来れねぇ。 ちゃーんと報告したからな! 報告義務は守ってるぞ!」
「分かんねぇヤツだな、ダメだって言ってんだろーが。 っつーかなんで土日なんだよ。 会うにしても一日でいいだろ」
「あぁ! それがな、聞いてよ! 先輩、仕事でこっちに来るらしいんだけど、温泉宿取ってあるから俺も泊まりなって言ってくれ……」
「ダメ」
「おい! 人の話は最後まで聞け!」
「何考えてんの?」
「えぇぇっ?」
一刀両断リターンズ!!
なんでそんなにバッサリいっちまうんだ!
向こうでは何かと世話になった先輩に会うのが楽しみなのと、温泉に浮かれてんのがそんなにいけねぇことか??
何考えてんの?って、それはこっちのセリフだ!
「………………」
「………………」
極限まで不機嫌な迅と、しばらく睨み合う。
なにがそんなに気に入らねぇんだよ。
後輩よりダチより翼より迅を優先してる(させられてる)のに、まだ何か足んねぇのか?
カレカノみてぇ~って笑っちまうぐらい、俺は迅の言うこと聞いてるつもりなんだけど……。
──あ、もしかして。
ぴこんっとひらめいた迅の一刀両断の理由。
猛烈な勢いの束バッキーが物語る、末っ子な迅の性格を忘れてちゃダメじゃん。
「分かったよ、迅……なんでそんなに一刀両断な迅之助になるのか。 ……寂しいんだな?」
「は?」
「うんうん、気持ちはよーく分かるぞ。 俺は迅のことも大事なダチだと思ってるから安心しろ。 意地悪で嫌味ばっか言うヤリ迅で、俺のこと必要以上に構ってるけど、一応は感謝してる。 でもな、向こうでのダチも俺には大事なんだ」
顎をこしょこしょしてくれてた右手を取って握る。
たっぷり感情を込めて、俺はダチに優劣なんて付けないよと力説した。
ごめんな、迅……気付かなくて。
俺を先輩に取られたみたいで寂しんぼが発動しちまってたとは、すぐには思い付かなかったぜ。
「──それで俺が納得すると思う?」
「えッ? 気持ち通じた!?」
「通じてねぇよ」
「なんでだよぉぉ!! お前どんだけひねくれてんの!?」
はぁぁぁ!?
俺の力説がほんのちょっとも響いてないだとぉぉ!?
無表情をキメたモデル顔の迅が、あ然とする俺の手首を掴んでくる。
えっ?と思った時には俺の体はゆっくりベッドに沈んで、例のえちえちな態勢へと変わってた。
上から、迅が見つめてくる。
二人ともがたった何秒か沈黙して睨み合ってるだけで、俺にはまるで経験のないやらしい雰囲気になる。
うぅぅ……押し倒されるの、めちゃめちゃ苦手だ。
いっつも何考えてんのか読めねぇ迅だけど、こうしてるときのコイツはマジで理解不能の生物。
何か言いたそうな視線が怖くて、何も言えなくなるし、もう見慣れたはずの迅のモテモテヤリチンなツラを見てらんなくもなる。
「雷にゃん。 俺さっき、乳首我慢したよな」
「あっ……♡ えぇ、はい、……それは……とてもありがとうございますと思ってる……」
「それならお前も我慢するべきだと思わねぇ?」
「はっ? ……はぁっ!? 俺の乳首と先輩を同じものさしで考えなきゃなんねぇの!?」
「そう」
「そ、そうって……」
一刀両断な迅は即答も躊躇わねぇ。
なんで?
先輩と会って、頭にタオル乗っけて一緒に温泉浸かって、俺が引っ越してからのアレコレを語り合うのがそんなにダメな事なのか……?
迅の考えてる事が少しも分かんねぇ。
バッサバッサと俺の動向を斬る意味が、ちっとも分かんねぇよ。
「あのな、雷にゃん。 俺には二つミッションがあって」
俺の太ももに座って舌なめずりした迅が、最高にやらしいツラでほっぺたを摘んできた。
「なんだ急に……ミッション……?」
「明日そのうちの一つを実行するから覚悟しとけ」
「か、かか、覚悟ッ!? 嫌だよ、なんで……! 俺痛いことすんのマジで無理なんだけど!! そのミッションって何なんだよ!」
「カウントダウンを無理やり早めたのはお前だからな、雷にゃん。 自分で自分の首を締めて、俺の楽しみを増やしてる」
「ん、ッ? えぇぇぇ!? ミッションとかカウントダウンとか……迅って映画の撮影でもしてんのッ!? ……んあぁっ♡」
ジタバタと足を動かして、迅を退けようとしてもビクともしねぇ二十七センチの差が憎い。
おまけに俺のふにゃったムスコを握ってシコシコするなんて、俺様迅様が発動してて会話する気ゼロじゃん。
童貞男子が快楽に弱えことを知ってるから、そんな楽しそうなツラしてんだろ。
アクション映画の撮影だか何だか知らねぇけど、俺を弄ぶのはやめてくれ──ッ!
「撮影より二回戦の方が楽しそうだろ」
「う、うんッ……?♡ いや、んな事な……っ、あぁっ♡」
「今ここで二つともクリアすることだって出来んのに……お前が泣くからやめてやってんだからな」
「やっぱり痛いことなのかよぉ……!? なんでだよぉ……! 俺がお前に何をしたって言うんだよぉ……!」
「さぁな。 今日は予行練習っつー事で」
「────ッッ!? ちょっ、なんだ、何す……ッッ!! い痛たぁぁぁぁッッ」
ふわっと俺に覆い被さった迅が、物騒な笑顔を見せた。 そしておもむろに俺の左肩にチュッとしてきたかと思いきや……次の瞬間、針でプスーッと刺されたような痛みが走る。
なんだ!? 俺、血抜かれてる!?
「タトゥーみたいにキレーに仕上げてやっからな。 こっちの肩からこっちの肩まで、一直線に」
「流血事件だけはやめろ!! 何してんだ! 痛ぁぁッッ!」
痛くて怖くて、俺がいくら暴れようが迅にはガキの戯れにしか過ぎねぇんだ。
やめろと言い続けて暴れる俺を軽くあしらう迅は、ほんとに右肩から右の首筋、左の首筋から左の肩に少しずつ移動しながら唇で針を刺していった。
出来上がった針刺しの痕を見たドラキュラ迅は最後にも、やらしい舌なめずりをした。
「こんだけ付けるとさすがに疲れるな。 でもいい気分」
……あぁ、そうかよ。 そりゃ良かったな。
二回戦を期待してた俺のムスコのキョム感の責任をどう取るつもりなんだ。
迅の考えてることが、本気で分かんなくなった。
痛め付けて、束バッキーして、俺が苦しんでるとこを見て楽しんでるのかもしんねぇ。
まさかドラキュラにまでなるとは思わねぇじゃん。
迅……お前は一体いくつ顔を持ってんだ。
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