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サビシイ(社会人四年目 七月) 1

 窓の外では小鳥が囀り、カーテン越しに柔らかな陽射しが差し込む日曜の朝。 「い……ってぇ………」  鈍く重い痛みで目が覚めた俺のテンションは氷点下から始まる。  海老型の姿勢で動けずにいる俺の背中側から長い手が伸び、引き寄せられるように抱きしめられた。首筋に柔らかな感触。ハルの唇だとすぐにわかる。  こっちを向いてとねだられて、痛い身体で寝返りをうち向かい合わせれば、唇に吸いつかれた。腰を引き寄せ、身体を密着させて、何度もキスを繰り返す。朝からハルのペースだ。まあそれもいつものことで、抗うのも面倒だしされるがままの俺。 「省吾おはよう。大丈夫か?」  やっと唇を解放されて正面の恋人を見つめてみれば、ツルッと爽やかな笑顔が憎たらしい。  夕べは悪魔スイッチの入ったハルに執拗に身体を弄られ、ガツガツと骨までしゃぶられて、やっと解放された頃には明け方だった。  理智的で男らしく、誰にでも分け隔てなく心優しいハルは、こと俺に関してスイッチが入ると悪魔の側面を見せる。嫉妬深く疑り深く独占欲の強い男。うっかり間違えて浮気したなんて事になったら(それが冤罪だとしても)間違いなく相手は殺されるし俺はヤリ殺される。と思う。想像するだけで恐ろしい。  とはいえそれが長く続く事はなく、大抵は朝になれば元に戻るので、今もそれ。 「……身体中が痛てぇ」 「ごめん、俺のせいだな」 「わかってんなら労れ。……てか早々弄り始めるんじゃねぇ! そういう労りは今いらねーの!」  笑顔で半勃起ちの俺の息子に手を伸ばすハルを思い切り押し返し、再び寝返りを打つ。  あーだめだ。もう少し寝よう。 「省吾?」 「寝る」 「じゃあ俺も寝る」  後ろから俺を抱きしめたまま、俺より先に寝息を立てはじめたハル。  おいおい。  すげぇ寝ずらいんですけどこの体勢。  もぞもぞと寝返りを打ち、再びハルに身体を向ける。

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