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初恋ビターチョコレート

 初恋の味は甘酸っぱいなんて嘘だ。  「ぼくはハルイチっていうの、きみはなんてなまえ?」  初恋はまるでカカオ90%のチョコレートみたいな味だ。  「フユ〜!今日は何してあそぶ〜?」  ただ苦くて苦くて……食べた後もずっと苦さが口に残ってしまう。  「フユ!どうしよう!!俺、佐伯さんに告白されちゃった!!!」  それでも俺は……  「フユ……俺……振られちゃったわ……」  残りの10%の甘さを求めてまたそのチョコレートにしゃぶりついてしまう。  俺、フユヒコは幼馴染であるハルイチが好きだ。これが恋愛感情だと理解したのは中二の事だった。  ハルイチは昔から持ち前の明るさと誰とでも仲良くなれるコミュ強さで男女問わず人気があった。そんな中、当時クラスのマドンナ的存在の佐伯と言う女子生徒がハルイチに告白をしたのだ。  帰り道、ハルイチが顔を真っ赤にして俺にその事を報告してきた時、あまりの可愛さに不覚にも勃起してしまった。  その時、俺は自覚した。俺はハルイチが好きだったんだと。  しかし、浮かれたのは一瞬で、それからはひたすら絶望した。  ハルイチの隣に居れば嫌でも分かった。ハルイチは俺を恋愛対象としてみることは絶対にない。  初恋と失恋は同時にやって来た。  それでも俺はハルイチの側に居たかった。だから、この想いに蓋をして幼馴染として隣に居座った。  例え  「フユ〜、見てこれ〜、この間デート行った時に買ったキーホルダー、可愛くね?」  こいつから付き合ってる女の惚気を聞かされる事になっても。  「いや、何だよこの不可思議な生き物は、クジラとアザラシが合体した魔物か何か?」  「おお!正解!クジラシくんだって」  「クジラシくんって……安直すぎるだろ……そしてそんなに可愛くない」  「ええ?そうかな〜、俺は可愛いと思うんだけどな〜」  ああ、そうだな。『お前』は可愛いな。  「……デートってこの間告白されたマネージャーの子と?」  「そうそう!!水族館行ってきた!」  ハルイチはケータイについてるクジラシくんを愛おしそうに撫でた。  俺の中でクジラシくんの評価が著しく低まった所で、後ろからハルイチを呼ぶ女の声がした。  振り返るとそこには先月ハルイチに告白した一個下の女の姿があった。  ハルイチが入部してるバスケ部のマネージャーで、黒髪のショートヘア。今時珍しくチャラチャラとした感じは無く、真面目なスポーツ少女と言った印象だ。  彼女の姿が見えた瞬間、ハルイチは今日一番の笑顔になり、彼女の元へとかけていった。  俺はワザと歩くスピードを遅くし、ハルイチ達の少し後ろに下がった。  あー、ハルイチ凄くいい笑顔だなぁ。  ハルイチは彼女と昨日のデートの事を話していた。クラゲが綺麗だったとかイルカショーが凄かったと語るハルイチの目はキラキラと少年の様に輝いていた。  それを聞いている彼女も少し恥ずかしそうに、でも楽しそうに話を聞いていた。  そんなバカップルを他所に俺はというと、ハルイチがデートでどんな事をしたのか夢中になって聴いていた。  ハルイチと水族館デートかー、ハルイチは中三の時に付き合っていた女と行った以来の水族館だからテンション高かっただろうなぁ。  薄暗い館内、ライトアップされたクラゲ、はしゃぐハルイチの手をそっと握ると恥ずかしそうに笑って握り返してくれる。  はぁ……可愛いな……ハルイチ  俺が脳内でハルイチとの水族館デートを楽しんでると、いつの間にかハルイチ達が近くに来ていた。  「フユ〜、今日さ!部活終わりにラーメン食いに行かね?」  ハルイチが少し上目遣いで俺を誘ってきた。……ラーメンにだが  身長差的に近くにいれば自然とハルイチが上目遣いで話しかけてくる。因みに俺が一番好きな角度がこの角度だ。  今すぐ襲いたくなるくらい可愛い、父さん母さん、俺を高身長に産んでくれてありがとう……  「つまり、俺に部活が終わるまで待ってろと?」  「いーじゃん〜、なぁ行こ〜ぜ〜」  クソ、可愛いが過ぎる。  余りの可愛さに即オッケーをしそうになったがチラッとハルイチの隣に居る彼女を見ると、ソワソワしながらハルイチを見ている。  分かりやすい人だな。そういやハルイチと付き合う人って大概素直な良い子が多いんだよなぁ  「……俺はパス」  「ええ〜!!良いじゃん、行こーぜ、付き合い悪りぃじゃんかよ〜」  「今までどれだけお前に付き合ってきたと思うんだよ……俺じゃなくて彼女と行ってこいよ」  「俺は今日、お前と帰りてぇ気分なんだよ」  はぁ……こういう事を平然というから離れられない。諦められない。  でも……  「俺は今日ラーメンの気分じゃないんだよ」  俺はハルイチを邪魔したくない。例えハルイチの隣に居るのが俺じゃ無くても、一歩下がって幸せなお前を見ていられればそれでいい。  「……んだよ、それ……もういい、お前とはもう一緒に帰ってやんねぇかんな!!」  「じゃ、俺も朝起こしに行ってやんねぇ」  「んきー!!フユの意地悪!!人でなし!!」  ハルイチといつもの様に戯れ合っていると、彼女がふふっと笑いながら「本当にハル先輩とフユヒコ先輩は仲がいいんですね」と言った。  「まぁな!幼稚園からの幼馴染だから」  「腐れ縁ってやつだよ」  嘘だ。ハルイチとの縁が腐ってるなんて思わない。  「ふふふ、私、幼馴染とか居ないから先輩方が羨ましいです」  「そういうもん?まぁ確かにフユみたいな奴は他にいねぇもんな」  俺も、ハルイチみたいな奴は他に居ない。  「まぁ今日はいいや。フユ!来週は絶対ラーメン付き合えよな!!」  「分かった分かった、来週は予定空けとくから」  俺がそういうとハルイチと彼女は朝練に行くために体育館へと歩いていった。  それから、三ヶ月後。  ハルイチが彼女と別れた。  夜遅く家に訪ねてきたハルイチは俺の部屋に入るや否や顔を真っ赤にして泣きながら俺に抱きついてきた。  ハルイチは彼女と別れるといつも俺に慰められに来る。  どうだ、俺の幼馴染は可愛いだろ?勃起しない様にするの大変なんだぜ?  俺は胸に顔を埋めているハルイチの頭をポンポンと撫でながらハルイチが落ち着くのを待った。  しばらくするとハルイチは一度深く深呼吸し、俺から離れた。  俺は至福の時間を堪能し破顔していた顔をキリと引き締めて、ハルイチにコーヒー(ミルクと砂糖たっぷり)を出した。  「……フユ、俺また振られちゃった」  「見れば分かる」  「ぅぅ……」  「……今度は何で振られたんだ?」  「……うぅ……それは……」  ハルイチは話したくないという様に目線を逸らし、コーヒーを啜った。しかし、俺が話を逸らす気がないと悟ると観念した様に話し始めた。  「……先輩は私の身体目当てだって……そう言われた……」  「……はぁ、まぁそんな事だとは思った」  「……だってさぁ、付き合ってるんだぜ?エッチしたいって思うのは普通じゃねぇ?」  「だからってお前みたいに会う度に求めてたら相手だって疲れるだろ?」  ハルイチは性欲が強い方だ。しかし、普段明るくて爽やか男子だからかハルイチを好きになる女は大抵真面目で純情な子が多い。だからか理想のハルイチと毎日のように身体を求めてくるハルイチのギャップに耐えられなくなり、振られるケースが多い。  因みに俺は毎日でも全然イケるけどな  「……仕方ねぇじゃん……おれ一人で上手く出来ねぇんだもん」  「それは……まぁしょうがないけどさ」  そしてハルイチはオナニーが出来ない。中学生の時、初めてのオナニー中に二番目の姉に見つかり笑われたのがトラウマになってしまい、以降オナニーがうまく出来なくなってしまったらしい。  ただでさえ性欲が強い上に一人で処理もできないとなると溜まっていく一方で、結果その全てが付き合ってる相手に向かうのだから、相手は受け止め切れないだろう。  「……なぁ……それでさ……フユ、今日お願いしてもいい?」  「はぁ……」  ハルイチのおねだりに俺は気が重くなり、心底溜息が出た。  「なぁ……頼むって……俺もう我慢限界……」  「……分かった分かった、してやる」  別にハルイチの願いが嫌なわけではない。むしろハルイチが可愛くおねだりしてるのだ、叶えてやるのは当然だ。  しかし……  「……んっ……んん……」  このおねだり……「ハルイチの性処理」は俺の理性を壊そうとするのだ。  「……はぁはぁ……んん……」  俺は自分のモノを扱く様する為に、ハルイチを抱きかかえる様に後ろから手を伸ばしてハルイチのモノをやさしく扱く。  ハルイチのモノは今にも破裂しそうな程張り詰めており、俺が少し触れるだけでビクビクと反応した。  「ん……はぁ……フユ……焦らしてないではやくぅ……」  「っ……」  潤んだ瞳で後ろにいる俺を見つめるハルイチは頬を朱に染めており、それはもう犯罪的な可愛さだった。  俺がゆっくりとハルイチのモノを上下に扱き始めるとハルイチはより一層ビクつきながら快楽に震えていた。  段々と扱く手を速めていくとそれに合わせてハルイチの息が上がっていく  「んん!!……はぁはぁ……んっあ!!んんん……フユ……それっ……」  俺が亀頭を触ってやると、ハルイチは腰を浮かして快楽に身を捩る。  「ハルイチ……気持ちいいだろ?お前ここ弱いもんな」  「んん!!きもちいい……けど……んんっ!!……へんになるぅ……」    「はぁはぁ……変になればいいだろ?ほらここ擦ると」  俺がハルイチの鈴口を少々乱暴に擦るとハルイチは声を抑えられず喘いだ。  「あんん!!それダメだって!!んんんん!!」  ハルイチが俺の腕の中でヨガっているという優越感が俺を更にエスカレートさせていく。  「ダメじゃないだろ……ほらお前のここ、こんなに欲しそうによだれを垂らして……グチャグチャじゃん」  「お……オヤジくさい……ことっ……んんあ!!ダメっ!!いまシゴいたら!!すぐっで、でちゃうっっ……」  鈴口からトロトロと流れるカウパーが潤滑油となり、クチュクチュと下品な音を立てて俺の手を加速させる。  「あ!……もう……イクっ……!!!イクイク!!でるっっっ!!」  手に熱いモノが吐き出される感覚と同時にビクビクと鮮魚の様にハルイチが跳ねた。  久しぶりに出したのだろう、滔々と流れ出る精にハルイチは蕩けた息を吐き、耳まで真っ赤に染めて快楽に浸っていた。  その姿はまるで果てた女の様に艶かしくて淫靡であった。  ……いや、果てた女なんて知らないが  そんな事を考え、ハルイチの出した精をティッシュで拭き取っていると、息を整えたハルイチが、潤んだ目で俺を見つめ「もう一度」と強請ってきた。  ハルイチまじ天使……  俺はなるべく顔に出ない様に、呆れたフリをしてハルイチのモノにそっと指を這わせた。  「いや〜、久しぶりにスッキリしたわ〜、ありがとうなぁフユ〜」  あれから更に2回も出したハルイチはフラれた事を忘れたかの様にいつもの笑顔で俺に話しかけてきた。  「……お前なぁ、幾らなんでも溜めすぎだ、少しは自分で処理する努力をしろ」  それかもっと頻繁に俺に手伝わせろ  「俺だって自分でしてぇけどさぁ、オナニーしてっと姉貴が入ってくるんじゃねぇかって緊張して上手く出来ねぇんだって……それに」  少し照れた様に目を伏せたハルイチは恥ずかしそうに俺を見て 「一人でやるよりフユにしてもらった方がきもちいいんだもん」 と告げてきた。  「……ったく、しょうがない奴だな」  俺は照れた事を隠す様に洗面所へ行き、いつもの様に蒸しタオルを作るとハルイチの汗ばんだ身体を拭いた。  「ふひぃ〜、極楽〜、いつもありがとうな〜、やっぱり俺、フユが居ないとダメだわ〜」  俺はその言葉に一瞬手を止めた。  分かっている。  ありえない事だ。  分かってる。  それでも、もしかしたら……  もしかしたら、今なら……  今ならハルイチは俺の気持ちを受け止めてくれるんじゃないか?  淡い期待に胸がざわめき、下っ腹の辺りがキュウキュウと締め付けられる感覚がする。    もういいんじゃないか?  気持ちを伝えて楽になっても  いいんじゃないか?  「ハルイチ……俺、」  TRRRRRRR  突然の電子音に呆然とした俺とは対照的に、ハルイチは慣れた手つきで自分の携帯を取り出して電話に出た。  「はい、もしもし……えっ!?あっいや……友達の家……だけど…………うん、うん…………えっ!?今から!?いや!大丈夫!!すぐ行くから!!……うん、ちょっと待ってて!!」  ハルイチは嬉しそうに電話を切ると、目を輝かせて俺を見た。  俺は直ぐに察した。  「彼女からか?」  「そう!さっきは言いすぎたって!もう一度話したいって!今俺の家の近くにいるって!」  「そうか、じゃ早く行ってこいよ」  「うん!そうするわ!!」  ハルイチは慌てて服を整えて、一瞬で帰りの支度を終わらせた。  「フユ、今日は色々ありがとうな!!またなんかあったら寄るわ」  「いいから、さっさと行ってこい……待ってるんだろ?」  「おう!じゃまた明日な!!」  ハルイチは今日一番の笑顔を浮かべて帰っていった。  扉が閉まると先程までの甘く愛おしい空気が一変し、部屋は苦々しい空気になった。  俺はふぅと息を吐き、良かったと安堵した。  良かった  ハルイチに気持ちを伝えなくて良かった。  きっと伝えたところでどうにもならなかっただろう  どれだけ長い時間、愛しても  どれだけ深く、愛しても  ハルイチは俺を選ばないだろう  だから良かった  ハルイチが彼女の元へ行って  良かった  良かったと思っているはずなのに  何故か心は苦々しい初恋の味を噛み締めていた。  それでも愚かな俺は10%の甘さを求めて、ハルイチの汗を拭いていたタオルに顔を埋めた。

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