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第4話①

「んー… 」 朝起きると、全く知らない空間にいた。起き上がると、布団に擦れた背中がずきずきと痛む。 …ここ、どこだろ。 辺りを見渡してもただホテルの中ような景色が映るだけで、ここにいる理由が思い浮かばない。酔い潰れでもしたのだろうか。それにしては頭は冴え冴えとしているけれど。 とりあえずベッドから抜け出し、そこで見知らぬ服を着ていることに気がつく。ホテルの寝間着とは違う、着心地のいい前開きのパジャマだ。 そして部屋の中央に位置するガラス製のテーブルに、料理の乗ったお皿とチューブ型の薬とメモが置かれている。 メモにはこう書いてあった。 “昨日はよく寝れたかな?簡単なものだけど朝食です。背中にはこれを塗ってしっかり治すこと。鍵はオートロックだから、そのまま出れば大丈夫だよ。 背中の跡が綺麗に治ったら連絡しておいで。その時は例え君が嫌がってもプレイするから。 ○××△○×□□@……ne.jp” 読んだ瞬間、昨夜のことを思い出して顔から火が出そうになる。 どうして忘れていたのだろう。あまりに幸せな出来事だったから、脳が夢と認識していたのかもしれない。 「由良さん…。」 昨日聞いた彼の名前を呼んでみる。 その名前を呼ぶだけで嬉しいような恥ずかしいような何とも言えない気持ちになって、深呼吸でなんとか落ち着けた。 それを何度か繰り返した後で、朝食をいただき、皿を片付け、G◯og×e マップで一度家まで戻った。 いつもクラブに行った次の日は何もせずひたすら寝るのだが、誰かと話でもしないと落ち着かない気分だから湯船に湯を張っている間に谷津にラインを入れてみる。 幹『今日暇?』 10秒以内に既読がついた。驚きの速さだ。 谷『なになに?なんかあった?』 幹『…1人でいたら心臓が爆発しそう…。』 谷『ちょっと待ってすぐ行く。幹斗の家でいい?』 幹『…面白がってる?』 谷『もちろん!!』 幹『風呂入るから40分後で。』 谷『りょー!!』 “その時は例え君が嫌がってもプレイするから。” スマホを閉じると、メモに書いてあった文面が脳内で由良さんの声で再生された。胸が疼いてたまらない。 彼は背中の跡が治ったら連絡してこいと言っていたけれど、それまで俺の心臓は持つのだろうか。そもそも時間を置いたら夢としか思えなくなって連絡できなくなりそうだ。 けれど1人で考えていても仕方がないし、笑われるの覚悟で谷津に話してみようか…。 “お風呂が沸きました” ぐるぐる考えていると、リビングに機械音が響いた。 そうだ、風呂に入ろう。そうしたら気が紛れるかもしれない。

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