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プロローグ①

『αなのに勿体無いね』  何度そう言われただろうか。  うちは皆βだ。  4人の弟妹(きょうだい)達と両親や親戚も皆β。  なのに長男の自分だけはαだった。  母曰く曾祖父がαだったとのことだが、残念ながら病で早くに亡くなり、彼をよく知る者は僅かだ。  曾祖父の子供も皆βで、おそらく自分は隔世遺伝、つまり先祖返りなのだろう。  まぁそんなことはどうでもよかった。  今はただ目の前のことで精一杯なのだから。 「兄ちゃんまだー?」 「もう出来るからちょっと待って。 つーかお前も手伝いなよ」 「無理、宿題中」 「たく、お前は……」  2つ年下の弟とのやり取りをしながらも目の前の鍋からは目を離さない。  そしてその後ろでは2人の妹ともう一人の弟がそれぞれ自由気ままに寛いでいる。  その様子を背中で感じ、兄弟の為に夕飯を作る宮市渚(みやいちなぎさ)17歳は大きくため息をついた。  5人兄弟の長男である渚は共働きの両親に代わって家事をこなすが、一人では大変な事が多い。  せめて弟妹の誰か手伝うと言ってくれたらと嘆くが、親が仕事でいないので可哀想だと自分が甘やかしたせいかそれに甘えきってしまっている。  全く、育て方を間違えたと渚は心の中で嘆くしかなかった。  まぁそうは言っても可愛い弟妹だから強く言えないままだ。 「はい、出来たよ。 テーブル持ってって」 「はーい」  食べ盛りの子供たちは我先にと大皿に盛られた唐揚げを口の中へ放り込んでいく。 因みに弟妹は上から、渚、唯人(ゆいと)(15)菜々(なな)(14)日和(ひより)(11)瑠樹(るき)(9)と言う5人兄弟だ。   「唐揚げうまっ!!」 「やっぱ兄ちゃんの唐揚げが一番美味しい」 「そりゃどうも」  そう褒められると作り甲斐はある。 「ほんとナギ兄はなんでも出来て凄いよね。 やっぱαだからかな?」 「………」  そう言われ渚は言葉に詰まる。 渚は親兄弟の中で唯一のαだ。 けれど渚にとってはそんなことどうでも良かった。 「αだとか関係ないよ。 馬鹿馬鹿しい」 「えーそうかな? ナギ兄ってαって言うとすっごい嫌そうな顔するよね」 そう、渚はαである自分が凄く嫌だった___

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