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再会⑤
「そろそろじゃないのか?」
そろそろとは何の事なのか、叶芽は想像がついていた。
「どうりでなんか身体が火照ると思った。
てか、なんか前回より早いんだけど……」
「お前はそうだよね。
不規則だ」
叶芽は急いでキッチンでコップを取り、水を注ぐと自分の部屋へ行き、机の引き出しからなにやら薬を取り出しそれを水で飲み込んだ。
これは発情抑制剤だ。
Ωに3ヶ月に一度やって来るαを誘う発情期。
これがあるからΩは厄介だ。
しかし、抑制剤があればちゃんと抑えられているが、中には抑制剤が効かず苦しむΩもいるらしい。
幸い叶芽はしっかり効いているが、彼の場合発情期が一定しない。
3ヶ月よりも早く来たり、かと思えば遅く来たりと不定期なのが面倒だ。
先程のようにαの父や佑真が叶芽のフェロモンの匂いでそろそろだと気付く事も多々ある。
αは番がいようとも番のΩ以外にも反応し、番にしてしまう事が出来る。
なので父は母以外も番に出来るので、息子であろうともΩなので理性を無くしてしまえば項を噛まれてしまう危険性がある。
とは言え、父はそうなる様な人では無い。
それでも抑制剤が効くまではフェロモンを撒き散らしている訳だから迷惑にはなるので、暫く自室に籠っていることにする。
スマホを手にすると、渚に何かメッセージでも送りたいと思った。
でもまずなんと送ればいい?
佑真しか友達がいないので、こう言う時どうすればいいのか分からない。
「う~ん………」
悩んだ末に『今日はありがとうございました。
またカフェに行きますね。』と当たり障りの無い文章を送った。
きっと今はバイトが忙しいと思うので、暫くはスマホを見ることも出来ないだろうから、叶芽は暫く寝ることにした。
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