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囲みモブ男子 茂

囲みモブ男子 茂  小学校時代、中学になって背も伸びたら彼女ができると何の疑いもなく信じてた。だけど、もうすぐ身長が170センチに達しようとしているのに、彼女はおろか、告白の気配さえない。あぁ、俺ってモブ男子なんだな…と切なく思う。  しかし俺の幼馴染の弘ときたら、身長は少なくとも10センチは低い160センチ以下、その上丸い女顔にぷるぷるの赤い唇で男らしさとは無縁。むしろ女子に混ざったら中に埋もれてしまう――のに、だ、モテている。彼女はいないが、バレンタインは友チョコを装って本命チョコを複数貰ったのを知っている。こういうのが主人公になるんだろうと思う。思うのだが…。  当の弘は、何気無さを装って廊下側の窓を眺めている。  何を見ているのか、探しているのか、わかりたくないのに知っている。きら、と輝いたような弘の瞳の色を見ているだけでわかる。今、ヤツが教室に入ってくる所のはずだ。  明るく色が抜かれた髪、身長は俺と同じくらいか少し高い、制服は気崩して上はボタンを広めに開けたシャツに学ランを羽織っただけ、不良と言われるような外見をしているが、その実は見た目だけのなんちゃってヤンキーだ。こいつ、京も弘と同じ側、主人公側の人間だ。  少なくとも弘にとっては王子様だ。  女の子と間違えられるのは外見だけにしておけばいいのに、どうも弘は京に熱を上げている。つまり、惚れているらしい。本人は言わないけれど、あんな熱くて一途な視線を向けていたら、周りで見ているだけで一目瞭然だ。  正直、京のどこがいいかなんてちっともわからない。見た目はヤンキーだが、中身は普通の中学生で、顔だって悪くはないけど可愛げなんて全くない。  数人と挨拶を交わしながら京が斜め後ろの席まで歩いて来る。 「はよ」  声を掛けられる。声変わりをして間もないクラスメイトの中にあっては、ちょっと目立つ位の低い声。 「おはよう」  はにかんだように挨拶を返す弘の声が少し高いのは気のせいじゃないはずだ。俺も挨拶を返し、再び弘に目を向ける。来るまでは必死に探してたのに、近くに来たら照れ臭いのか視線を外している。いかにも恋をしてますって言う視線と行動に、幼馴染としてむず痒い気持ちになる。そんなに好きなんかなぁ。どこがいいんだろ? わからなくてもいいし、わかりたくもないのだけど、何が違って見えるんだろう。ほんと不思議。

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