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番外編 尽くし尽くされ 3

 雅史の指から流れ出る曲を、アオは知っていた。 「サティの『Je te veux(ジュ・トゥ・ヴ)あなたが欲しい』ですね。」 「そうだよ。」  そして、雅史のバリトンがピアノの音色に合わせて奏でられる。 Ange d’or, fruit d’ivresse, Charme des yeux, Donne-toi, je te veux. Tu seras ma maîtresse pour calmer ma détresse Viens, Oh déesse. J’aspire à l’instant précieux où nous serons heureux Je te veux 「なんて言ってるの?」 「ここは、きみが俺の元へとやって来てくれることを願っているんだ。きみが欲しくてたまらなくてね。」 Oui,je vois dans tes yeux La divine promesse, Que ton cœur amoureux Ne craint plus ma caresse 「ここは?」 「きみが俺の愛を受け入れてくれた。」 Enlacés pour toujours, Brûles des mêmes flammes, Dans des rêves d’amour nous échangerons nos deux Âmes 「次は、どうなりました?」 「きみと俺が結ばれている。今のように。」 ◇◇◇  暫しの静寂の後、雅史はアオの手を取った。 「アオ。きみのここへ、指輪を填めても?」  しかし、アオは首を横に振る。 「いりません。」 「何故?」 「だって僕は、もう、その(リング)をもらっています。」  アオはきゅっと雅史に抱きついた。 「僕は今日、あなたの家族という輪の中に入れてもらった。僕にとっての輪は、それで、充分すぎるんです。僕の大切な輪。」  そして、今度は雅史の左手をアオが取る。 「いつか、雅史さんと僕の子どもが生まれた時に、その輪は続きます。その時が、僕から雅史さんへと(リング)を贈る時です。」 「それが、俺たちの指輪の交換、ということだね?」 「はい。」 「アオ。それは、とても素敵な誓いだな。ありがとう。」 「僕も、ありがとうございます。」  青い光が燦々と降り注ぐ夏の夜、二人は誓いのキスを交わす。  そしてまた、その(リング)の交換が成される日も、近づいていたのであった。 (番外編 終わり) ※ 『Je te veux(ジュ・トゥ・ヴ)あなたが欲しい』 歌詞引用元のリンクです。 https://furansu-go.com/je-te-veux/

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