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第16話

 天王寺は、手と唇で丁寧にましろの身体を辿っていく。  触れられる場所全て気持ちがよくて、するりと臍の横を撫で下ろされると「あっ」と高い声が飛び出た。 「あ……っぁ、ごめ、ごめんなさい……声、が、」 「どうして謝る」  自分のものではないような声が出てしまうことへの羞恥と、天王寺はそんな声を聞いて気持ちが悪くないだろうかという不安と、彼に真実を告げずにこんなことをさせている罪悪感。  複雑な気持ちが絡み合って上手く言葉にできず、ただ揺れる瞳で見つめれば、天王寺はそっとましろの唇をなぞった。 「もっと……お前の声を聞かせてくれ」  何かを堪えるような低い声と、熱を孕んだ瞳にどきりと胸が波打つ。  ましろの答えを待たず、天王寺は再び身をかがめると、愛撫を再開した。 「っ……あ、」  熱い手が内腿を撫で上げ、きわどい場所をぞろりと擦る。  動揺して反射的に視線を落としたましろは、勃ちあがり先端から蜜を零して震える己自身が天王寺の口の中に消えていく瞬間を見てしまった。 「や、~~~っ」  熱い口内に導かれ、あまりの刺激に声を失う。  ぬるぬると舌で扱かれると、突き上げるように腰が跳ねた。 「ァ……っ!あ、だめ、っあ、あっ!………っ………」  強すぎる刺激に訳が分からなくなり、びくんと仰け反る。  急激な絶頂にぐったりしながら息を整えていたましろは、天王寺の口の中に出してしまったことに思い至り、慌てた。 「っあ……っ、ご、ごめ……なさ、」  力ない謝罪に天王寺からの返事はなく、代わりに肩を引かれ、うつ伏せにされる。  腹の下に枕を押し込まれて、背後の天王寺に恥ずかしいところを晒すような格好に顔が熱くなった。  見ないで欲しいと思うのに、視線を感じる。  再会した日は、外は夜で部屋も暗かったのでこんな風に見られることはなかったが、暗くなりつつあるとはいえ、まだ太陽はその姿を隠しきっていない。  視線から逃れたくて腰を引くと、逃がさないと言うように双丘を強く掴まれ、割り広げられた。 「え、そんな、ところ……っ」  息がかかったと思うと、ぬるりと舐め上げられて、驚く。  閉ざされた場所をこじ開けるように、硬くした舌に抉られて、そこがひくりと震えたのがわかった。 「だめ、です……っ、そんな、汚い……っあ、あっ」  どうしてこんなことまで、とましろは困惑する。  好きな人ならばともかく、厚意でこんなことまでできるのだろうか。  ましろはこうしたことに疎く未熟な自覚もあるため、遠慮して止めるべきなのか、喜んで受け入れるべきなのかを測りかねて、ただされるがまま、与えられる刺激に震える身体を差し出すことしかできなかった。  やがて、たっぷりと濡らされたそこに指が差し込まれる。  強く感じた異物感はしかし、慎重に中を探られることで妖しいものに変化していく。  ある一点を擦られると、大きく腰が揺れた。 「な、に……っ、そこ、こするの、…っあぁっ!や、びくって、なっ……」  何かが漏れてしまいそうで、不安になる。  強く反応してしまう場所にそれ以上触れられるのが怖くて身をくねらせると、腹の下の枕に勃ち上がったものが擦れて、感じているものが快楽だと知った。 「ましろ」  欲望をにじませた声を後ろから吹き込まれて、どきりと鼓動が鳴る。  ひたりと後ろにあてがわれた熱いもの。  ぬるぬると狭間に擦りつけてから、それはましろの中に潜り込んできた。 「あ、あっ……!」  押し込まれると、痛みと圧迫感で声かでる。  辛くても、嫌ではなかった。  自覚したばかりの天王寺への想いが、全てを気持ちよさに変えていく。  それでも、天王寺の意に添わぬことをさせてしまっているという罪悪感は拭えない。  せめて、天王寺にもたくさん気持ちよくなってほしかった。 「もっと、して、くださ……っ」  ましろには経験もなく欲求もなかったので、どうすれば喜んでもらえるのかわからない。  少しでも天王寺の思うようにしてほしくて、拙く腰を振った。  すると腰を掴む手に力がこもり、痛いくらいになる。  抽挿が激しくなり、切れ切れの高い声をあげながら、熱さに身を委ねた。 「ちー様……っ」  攫われそうで切なく呼ぶと、縋るようにシーツを掴む手を、背後から伸びてきた手が握ってくれる。 「あぁっ、あ、や、もう、あっ、あん、あ………っ」  ひときわ奥を穿たれたかと思うと唐突に引き抜かれ、背中に熱いものがかかった衝撃で、ましろも達していた。

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