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不器用な初恋のその後2
「……手伝う……、とは……?」
懇願を受けた天王寺は、しかし何故か部屋の中に入ろうとせず、戸口で聞き返した。
ましろがズボンを下げているから、遠慮しているのだろうか?
確かに他人に見せる格好ではないし、もちろん恥ずかしいのだが、見せなければ手伝ってもらえないので、仕方がない。
ましろは距離感に内心首を傾げながら、やや遠い場所から、恋人へのクリスマスプレゼントはましろ自身が一番喜ばれる、全身にリボンを巻くのは難しいからそこだけでも、と八重崎にアドバイスを受けたことを説明した。
「…何故そんなことになってしまったのか…、わからないが一応事情はわかった」
天王寺は安堵したような、拍子抜けしたような顔で一つ息を吐き出すと、ようやくベッドに座るましろの隣に来てくれた。
わからないがわかったとは、ましろの説明は分かりにくかっただろうか?
「それで、俺は何を手伝えばいいんだ?」
「ちー様は、蝶結びは出来ますか?うまくできなくて……教えて欲しいです……」
しょんぼりしながらリボンを渡すと、天王寺は不思議そうな顔をする。
「教えるようなものか?靴紐を結ぶのと同じだと思うが…」
「靴紐…ですか。結んだこと、ないです…」
現在、ましろの部屋の靴箱に並んでいるのは、革靴とレインブーツだけだ。
学生時代には授業のための運動靴を持っていたが、紐がほどけると、いつも誰かしら側にいる人が結んでくれた。
自分がやると時間がかかって授業に支障をきたすからだろうと当時は深く考えずにいたが、天王寺に「そうだったな」と諦めたような顔をされてしまい、呆れられてしまったとましろは慌てる。
「こ、今度、スニーカーを買って練習します……!」
「スニーカーは蝶結びの練習のために買うものじゃ…、いや、いい。じゃあ、やってみるから、見ていろ」
何がいいのかよくわからなかったが、天王寺の手が近付いてきて、ましろはそれを見逃してはいけないとそちらに集中した。
「んっ……」
するりとリボンが巻き付く感触に、曖昧ながらも性感を覚えて、声が出てしまった。
自分で巻いたときは、こんな風に感じなかったのに。
天王寺は真面目に付き合ってくれているのに、何を考えているんだと己を叱咤する。
咎められるかと思ったけれど、器用な指先が止まることはなかった。
「これでいいか」
あっという間だった。
天王寺の結んだリボンは、歪になったり、垂直になったりせず、綺麗な蝶になっている。
「ちー様はやっぱりすごいです」
感動していると、天王寺は、すぐにリボンをほどいてしまった。
「あ…」
「自分でやるんだろう?」
「は、はい。がんばります」
リボンを手渡され、再度チャレンジしたが、しかし集中できない。
今更だが、天王寺がましろの手元を…つまり性器をじっと見ているのだと思うと、ドキドキしてしまい、指先が上手く動かない。
先程は、リボンを結ばなければという気持ちが強くて、手伝ってもらうとはどういうことかを失念していた。
己の鈍さを呪っても本当に今更である。
「ち、ちーさま……、ごめんなさ……」
そんな状況で上手くできるわけもなく、ましろは困って天王寺を見上げた。
「じゃあ、俺が結んでやる」
「あ……、」
甘い声に反応して、既に反応していたそこがぴくんと揺れる。
リボンの感触と、当たる指先。
再び綺麗な蝶結びが出来上がる頃には、ましろの中心はすっかり形を変えてしまっていた。
「ほら、できたぞ」
「ぅ…、あ、ありがとう、ございます…」
「ラッピングも済んだし、食事にするか?」
「え……、」
このまま?と、ましろは眉を下げて自分の体の状態を確認した。
感じやすいましろのそこは、既に先端に蜜をたたえ、直接的な刺激を求めて震えている。
だが、始める前は自分もそのつもりだった。天王寺も空腹だろうし、先に触ってほしいなどと我儘を言うのは……。
己の欲と相手の欲のどちらを優先させるべきか悩んでいると、天王寺はふっと笑った。
「冗談だ。料理も用意してくれてたみたいだが、プレゼントの方を先にもらっていいか?」
優しい申し出に、ましろはこくこくと必死で頷く。
そして、その身を差し出すように、天王寺へと身体を寄せた。
「ちー様…、どうか私のこと、もらってください…、」
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