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不器用な初恋のその後5

「あ、あの、ちー様…、じ、自分で…できます…」 「いいから、じっとしていろ」  たっぷり愛してもらった後、天王寺の食事をする前にシャワーを浴びようという提案に頷いた。  以前は恥ずかしいからと一緒に浴室に入ることを断ってしまったが、よく考えてみれば、公衆浴場というものがあるのだから、他人との入浴は、普通の行為なのかもしれないと思い直したのだ。  相手が好きな人だから、恥ずかしいと思う気持ちを完全に払拭できたわけではないが、今は天王寺のそばにいたいという気持ちが勝った。  ただ、天王寺の部屋の浴室は、公衆浴場のようにシャワーがいくつもついているわけではない。  どうするのだろうと思っていると、洗ってやると言われて驚いた。  自分でできると主張しても、天王寺は譲らず、背後から回した手でましろを洗い始める。  湯気で曇った鏡を水滴が滴り、そこから天王寺に体を洗われる自分が覗いているのが恥ずかしい。 「ん……っ、ち…さま……っ」  天王寺の手つきは優しく、愛撫とは違うのに、先程の余韻でどこを触られても性感に繋がってしまう。  甘い声が漏れてしまうことを変に思われていないだろうかと、背後の様子を窺おうとして、まだ反応していない天王寺のものが視界を掠めた。 「(……やっぱり、違う)」  先程、リボンを結ぼうとしたときの違和感はこれだ。  ましろは思わず聞いていた。 「ちー様、お聞きしてもいいですか?」 「何だ」 「どうして、私とちー様とで形が違うのでしょうか」 「違うってどこが、……………………」  ましろがどこを見比べているのか、視線の先を追って知った天王寺は、一瞬固まり、そして何故か祈るように瞑目した。  浴室には、しばしシャワーの音だけが響く。 「……ちー様?」  聞いてはいけないことだっただろうか。  確かに、体の形の差について聞くなんて、少し不躾だったかもしれない。  別に違うからどうということではなく、ただ、ましろは純粋に疑問だったのだ。  天王寺なら、人に訊くべきことでない場合も含めて、真実を教えてくれると思ったのだが。 「そういう話を……今まで誰ともしなかったのか?」  若干驚きの混じった声音を不思議に思いながら、ましろは首を横に振った。  自分と他人の性器の形の違いについてなんて、話題にしようと思ったこともない。  仮に、そんなことを話すとしたら、月華だろうか。  月華は寝る時は裸なので、タイミングによっては全裸の姿を見ることはあった。  だが、当たり前だが他人のそんなところをまじまじとは見ない。  違いに気づいたのは、やはり、天王寺のことが好きで、天王寺の体にも興味があるからだろう。  ましろは、今まで誰かのことを、そんな風に意識したことがなかったのだ。 「もしかして…、知っていて当たり前のことなのですか?」 「いや、……あー、まあ、ただの個人差だから、深く気にするな」  妙にあっさりと質問を打ち切り、肩を掴んで再度前を向かされる。 「個人差……?」 「違うことで、特に不都合があるわけではないんだろう?」 「そう…ですね。ただ、普段もちー様と同じ形がよかったので、少し残念です…」 「…………………………………」 「ちー様?」 「ましろ」 「はい」 「俺以外の奴に、こういうことを聞くなよ」 「えっ…、も、もちろんです。ちー様以外の方に、こんなことをお聞きするのは……その、恥ずかしい、ですし……」  とんでもないと首を振ると、天王寺はなんだか疲れた顔をした。  ましろが無知すぎて呆れてしまったのだろうか。 「ちー様、あの……何も知らなくて、ごめんなさい」 「謝らなくて大丈夫だから、大人しく洗われていろ」 「??はい…」  天王寺はどうして疲れた顔になったのか考えていたら、体は洗い終わっていた。

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