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第5話 進展(7/7)

真夜中に、アルはこっそりと起き出した。 ユーベルと夜を過ごすようになってしばらく経つが、こうしてこっそり抜け出すことがしばしばあった。 理由は、もちろん、男の生理現象だった。 猫が混じっているせいなのか何だか知らないが、人にはない発情期のようなものがあって、そのせいで何度か記憶に残らないセックスをしたことがあった。 普段の嗜好にはない乱暴な形跡が残っていたこともあって、アルはセックスに対して、性欲だけの行為にしたくないという思いが強くあった。 だからこそ、身体の繋がりを遠回しに避けようとする恋人の意思に合わせて、のんびり歩むようなペースでも平気でいられた。 それに、傍で笑っていられるだけで充分に心地いいのは確かだった。 ベッドにいるユーベルの寝顔を確認すると、この日のアルはふと、こいつはどうしてるんだ?と疑問を抱いた。 今のところ一度も、そんな素振りを見たことがなかった。 可能性があるとしたら、自分が抜け出している間か、もしくは日中か…いや、その可能性は低そうだ。 なにせ日中の彼の周りには誰かしらが居て当たり前なのだから。 そんな不粋なことを考えながら見つめていたら、下半身が元気になった。 まるで警戒心のないあどけない寝顔に、薄く開いた唇。 指でも突っ込んで鳴かせてやろうか、と生唾を飲むなんて、我ながら雄としてかなり正直者だ。 そして今度はふと、もしかして不能なのか、と勘繰った。 前に聞いた悪戯の件もあるし、ありえない話ではない。 でもその直前に襲い掛かっていた時は、触れることは叶わなかったが、おそらくちゃんと反応していた。 たぶん、だが。 それにだいぶ敏感に反応していて、むしろ性的な刺激には弱そうだった。 思い出すと余計に興奮してくる。 って思考が逸れたが、ということは、不能というわけではなさそうだった。 ふと我に返ったアルは、人の寝顔を見ながら何を考えてるんだ…と自分に呆れて鼻で笑い、穏やかな寝息を立てるユーベルの頭をそっと撫でて、トイレに向かった。 翌朝、ユーベルが起き上がり、うーん、と伸びをしてから腕を降ろすと、何かに当たった。 あれ?と思って隣を見ると、アルが毛布も被らずに丸くなって眠っていた。 ぎょっとしたあと、どうせ寝るなら中に入ればいいのに…と、半分呆れながら、寒そうに縮こまる彼に今まで自分が温めていた毛布を掛けてあげた。 暫くの後、ユーベルが身支度を終えた頃に、アルがもそもそと起き始めた。 ベッドに座って、眠そうにふらふらと頭を揺らす。 ぼんやりとした様子で毛布をじっと見て、 「…あれ、俺、どこで寝たっけ…」 と呟いた。 「おはよう。起きたらそこに居たよ」 「んー…?」 記憶がないのか、頭が回らないのか、ぼーっとしたまま首を傾げるアルを見て、ユーベルが笑う。 「上に居たから寒そうにしてた。毛布持ってくるか、入れば良かったのに。本当に猫みたいだね」 「…あ」 アルが急に、何かを思い出したように頭を掻いた。 それから、そそくさとベッドを降りて、なんでもない、と身支度を始める。 「…?」 どことなく素っ気ない背中からなんだか話したくなさそうな様子を見て、まあいいか、と疑問を残しつつユーベルはベッドを整えるのだった。

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