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第6話 違和感(2/8)

「ふぅ、ご馳走さまでした。お礼にこれを差し上げます」 そう言って両手をポケットに突っ込む。 ごそごそと探って出てきた片方の手に、小包のチョコレートがいくつか乗っていた。 「わぁ…! もらっていいの?」 「うん。その代わり、もう行かなきゃ。みんなで仲良く食べてね」 「うん! ありがとうユーベルさま!」 「あはは、またね」 子供たちと手を振り合って、クリスに視線が送られた。 気が付いたクリスも、ユーベルに合わせてそっとその場を離れる。 「…お疲れ様です」 「ふふ、半分は楽しいからいいんだけどね」 「もう半分は?」 「ちょっと大変かな」 「流石のユーベル様でも、そうですか」 「何その言い方、なんかトゲがある気がするんだけど…」 ユーベルが怪訝な視線をクリスに送ると、クリスからも同じ視線が返ってくる。 「子供相手とはいえ、泥水を飲むなんて思いませんでした」 「えっ…」 クリスの視線に落胆の色が追加される。 しかしそれを物ともせず、ユーベルは笑った。 何故ならクリスが子供たちと同じように、まんまと騙されていたからだった。 「あははっ、飲んでないよ。フリをしただけ」 そう言って、ポケットに突っ込んだままのもう片方の手を出すと、泥水が染み込んだハンカチが袖口から出てきた。 内側に隠していたせいで、ユーベルの袖もまた汚れている。 「えぇ…たかが子供相手に、そこまでしますか?」 「ふふ、喜んでくれるからね。汚れたら洗えばいいし」 クリスは思った。 見上げた根性だが、おかげで子供からのハードルが上がっている…と。 「…今度から、用意しておきます」 「あはは、気付かれたら最後だからね。無理はしないでね」 話をしながら二人が聖堂の中に戻ると、ちょうど、ひなたぼっこに出ようとしていたアルと鉢合わせた。

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