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第10話 猫の迷い-後編-(12/20) ※R18

「じゃん」 「いま私、少し引いてる」 「!? なんでだよ! そもそもお前と付き合ってんだから逆に普通だろ!」 「猫さんの普通って幅広いなー」 ユーベルが棒読みで笑っていると、新しいエロ本が見開かれてテーブルに置かれた。 何の気なしにそれに目をやると、アルが後ろからくっついてくる。 「はい、どう思います? 興奮しますか?」 男が二人、汗を浮かべて抱き合うページを見せられて、ユーベルは首を横に振った。 「あのね、なんっとも思わない。これならまださっきの女性の方が魅力的。強いて言うなら、暑苦しいなぁ…くらい」 「なっ…なんで!?」 「いや、なんでって言われても…ていうか重いんだけど」 アルがのし掛かったまま本を捲る。 何度か手を止めて、これは?と聞いて、その度にユーベルが首を横に振る。 「だーかーら、なんとも思わないってば」 「いま俺、お前にちょっと引いてる。草食ってレベルじゃねーぞ」 「えー、そんなこと言われても…逆に猫さんはどうなの? これ見てなんか感じるの?」 ユーベルが聞き返すと、アルは黙ってページを眺めた。 真剣な様子で何枚か捲って、うん、と頷く。 「何とも思わん。暑苦しい」 「でしょう!? っていやいや、じゃあなんでこの本持ってるの!?」 「はっはっはっ、清々しいほどに反応しないぜ」 「別に偉そうに言う必要はないけど…それと同じだよ。男女どっちもそんな感じ」 もういい?とユーベルが本を閉じる。 相変わらず涼しそうなその横顔に疑念を抱いたアルは、怒られる覚悟で手を伸ばして、再び彼のデリケートな部分に触れた。 「…いい加減怒るよ」 「あー…嘘はついてないんだな…うん。柔らかいな、うん…」 「こんな嘘ついてなんの得があるというのか。離したまえ猫くん」 「いや、やせ我慢してる可能性もあるかと思って…えぇー、じゃあ何なら興奮すんの?」 アルがもっともな疑問をぶつけると、ユーベルは鼻で笑った。 「教えない」 「うわ…、あ、やべぇ俺」 「…? 何?」 相槌にしては妙な言葉だと不思議に思ったユーベルが振り返ると、顔をほんのり赤くしたアルが居た。

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