88 / 109
第10話 猫の迷い-後編-(12/20) ※R18
「じゃん」
「いま私、少し引いてる」
「!? なんでだよ! そもそもお前と付き合ってんだから逆に普通だろ!」
「猫さんの普通って幅広いなー」
ユーベルが棒読みで笑っていると、新しいエロ本が見開かれてテーブルに置かれた。
何の気なしにそれに目をやると、アルが後ろからくっついてくる。
「はい、どう思います? 興奮しますか?」
男が二人、汗を浮かべて抱き合うページを見せられて、ユーベルは首を横に振った。
「あのね、なんっとも思わない。これならまださっきの女性の方が魅力的。強いて言うなら、暑苦しいなぁ…くらい」
「なっ…なんで!?」
「いや、なんでって言われても…ていうか重いんだけど」
アルがのし掛かったまま本を捲る。
何度か手を止めて、これは?と聞いて、その度にユーベルが首を横に振る。
「だーかーら、なんとも思わないってば」
「いま俺、お前にちょっと引いてる。草食ってレベルじゃねーぞ」
「えー、そんなこと言われても…逆に猫さんはどうなの? これ見てなんか感じるの?」
ユーベルが聞き返すと、アルは黙ってページを眺めた。
真剣な様子で何枚か捲って、うん、と頷く。
「何とも思わん。暑苦しい」
「でしょう!? っていやいや、じゃあなんでこの本持ってるの!?」
「はっはっはっ、清々しいほどに反応しないぜ」
「別に偉そうに言う必要はないけど…それと同じだよ。男女どっちもそんな感じ」
もういい?とユーベルが本を閉じる。
相変わらず涼しそうなその横顔に疑念を抱いたアルは、怒られる覚悟で手を伸ばして、再び彼のデリケートな部分に触れた。
「…いい加減怒るよ」
「あー…嘘はついてないんだな…うん。柔らかいな、うん…」
「こんな嘘ついてなんの得があるというのか。離したまえ猫くん」
「いや、やせ我慢してる可能性もあるかと思って…えぇー、じゃあ何なら興奮すんの?」
アルがもっともな疑問をぶつけると、ユーベルは鼻で笑った。
「教えない」
「うわ…、あ、やべぇ俺」
「…? 何?」
相槌にしては妙な言葉だと不思議に思ったユーベルが振り返ると、顔をほんのり赤くしたアルが居た。
ともだちにシェアしよう!