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第30話 香り ②
しまった。幸樹兄さんにくっついた時、匂いが移ったんだ。
雅樹は匂いに敏感だから、気がついたのか?
原因はなんだ?
それより今はそんな事を考えるより先に、もっともらしい言い訳を考えないと…
「これ?俺、新しい香水欲しくて、色々試してたから、そん時かな?」
智樹が一瞬にして考え出した、もっともらしい言い訳。
「試しにわざわざ幸樹兄さんの香りの香水つけたのかよ…」
雅樹は不機嫌になる。
「容器が変わってたんじゃないかな?気づかなかっただけ。わざとじゃない。でもどうして雅樹がそんなに不機嫌になるんだよ…」
俺が髪を切っても、香水変えても、何も気づかなかった雅樹が、今日に限ってそんな事気にするなんて、意味がわかんない。
「嫌だからに決まってるだろ」
雅樹はチョーカーから覗く智樹の首に、キスマークを付けた。
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