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第3話 コーヒーショップで ②
真司は何度か立花にメールをしようと思ったが、どうしてもコーヒーショップであった立花の後輩の姿がチラつく。
かわいい系のイケメンだった。
身長も高い。立花と同じ会社の部下…
同性から見ても、笑顔がとても素敵だった。
自分と立花の後輩と比べて、どこも勝てない…
だって俺は…どこも普通…
なんの取り柄もない…
多分立花さんだって、俺との食事より知的な彼との食事の方が楽しいに決まってる。
『俺と立花さんとでは、住む世界が違いすぎる…』
たまに仕事の合間、立花に会えるかもしれないコーヒーショップの前を通っても、
もしかしたら、立花さんと後輩が一緒にいるかもしれない…
そんなところ…見たくないし、出くわしたくもない…
真司は店内に入らなかった。
その後、立花から2回ほど電話がかかってきたが、なにを話せばいいかわからず、真司は電話に出なかった。
そんな時は必ず立花からの留守電が入っており、
『お忙しい時にすみません。また電話します』
と、録音されていた。
本当は立花に会いたい真司は、立花の声が録音されている留守電を何回も聞いてしまっていたのだった。
なにやってるんだ…俺…
そんな中、立花から電話ではなくメールが入ってきた。
『美味しいワインが手に入りました。もし、よろしければ、ご一緒していただけませんか?佐々木さんのご迷惑になっているのであれば、これで最後にします 立花』
!!
デスクワークをしていた真司はこれを読んだ途端、急に立ち上がった。
これが最後なんて嫌だ‼︎
真司は今にも泣きそうになる。
「どうした、佐々木?」
近くに座っていた同期の野宮が呑気な声で真司に話しかけた。
「野宮、悪い‼︎今日、お客さんと約束の後、俺、直帰する。あとはよろしく‼︎」
「え⁉︎佐々木、どう言う事⁉︎」
理解ができない野宮をのこし、手際良く準備をした真司は店を飛び出した。
客とのアポまであと少し。
人気のない路地に入ると、真司はいそいで立花に電話をした。
呼び出し音だけ響き、立花は出ない。
「っくそ…」
客とのアポの時間になり、携帯を鞄にしまい待合場所まで急いだ。
客に物件を紹介している最中も真司の頭の中は立花の事でいっぱいだった。
客との内見も終わり、急いで携帯を取り出すと立花からの着信一件とメールが届いていた。
『電話に出れず、すみません。また折り返し、ご連絡します』
立花からのメールを読むと、初めてのメールのやり取りを思い出す。
でも、今いざ返信するとなると、
なんて返そうか…
また立花の後輩の姿が脳裏をよぎり、自分との差をひしひしと感じさせられてしまう。
でも、これが最後なんて嫌だ‼︎
絶対に‼︎
10分ほど考え、
『こちらこそ、お電話に出られず、すみません。今日、ぜひ伺わせてください。また、立花さんのよろしい時間など教えていただけると幸いです。よろしくお願いします 佐々木』
と、返信をした。
もっと、言いたい事はたくさんあったが、今の真司には、これが精一杯だった。
真司は立花からの返信を待つ為、近くの喫茶店にはいった。
立花さん…返信くれるだろうか…
今まで、何も連絡しなかった事、怒ってないだろうか…
これで、本当に最後になってしまうんだろうか…
もう…立花さんには…会えない?…
不安な気持ちだけが頭の中をぐるぐる回る。
そんな事をずっと考えていて、頼んだカフェオレは、何の味もしなかった。
しばらくして、携帯にメールが届いた音がした。
立花さんからだ‼︎
ドキドキしながら、メールを開くと、
『返信ありがとうございました。嬉しいです。では、8時ごろ私のマンションに来ていただけませんか?』
よかったーーーーー‼︎‼︎
嬉しさで、本当はガッツポーズをしたいが、ここは喫茶店。
真司は心の中で、ガッツポーズをしながら叫んでいた。
立花からのメールひとつで、さっきまでの暗い気持ちが嘘のように晴れていった。
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