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第5話 はやる気持ち ②
以前のように、立花の家はとても綺麗に整頓されており、品のいい調度品が並んでいた。
き、緊張する…
心臓の音が立花に聞こえるのではないかと思うぐらい、ドキドキした。
「佐々木さん、コーヒー飲まれますか?」
「!いえ…わたしは大丈夫です」
緊張のあまり、真司の声が裏返る。
「では、ソファーで少し待っていただけますか?わたしは急いで着替えてきます」
「は、はい!」
笑顔のまま、立花が部屋を出る。
はぁ〜〜。
立花が部屋から出て行き、真司は緊張から解放された。
普通の服装もカッコ良かったけど、やっぱりスーツ姿もカッコ良かった。
立花さんに、似合わないものなんてあるのだろうか…
それより、手土産渡すタイミングっていつ⁉︎
調べてこればよかったー‼︎
真司は、一人浮かれたり、焦ったり。
「お待たせしました。って、佐々木さんどうされましたか?」
立花は、焦りすぎて部屋の中をウロウロしている真司を見て、驚いたんだ。
「‼︎いえ‼︎なんでもないんです‼︎あの、こ、これ、ありきたりなものですが…」
真司は手土産の入った袋を立花にぐっと差し出した。
「ありがとうございます。あ、このチーズ、ワインによく合うんですよね。佐々木さん、ご存知だったんですか?」
「いえ…あの…受け売りです…」
店員さんに聞きまくって決めたチーズ。
だから、本当に受け売りなんです…
今度はちゃんと勉強してきます‼︎
って、俺もう次あるって思ってる⁉︎
「後でお出ししますね」
立花が大きな冷蔵庫を開けると、中にはびっしりと料理が入っていた。
「‼︎凄くたくさんのお料理、作られたんですね」
真司の素直な気持ちが声に出た。
「もしかしたら…もしかしたら、佐々木さんとお食事できるかな…と思い…沢山作りすぎてしまいました」
「どれも綺麗で美味しそうですね」
「見た目だけですよ」
立花は少し照れた。
「あの…俺にできる事はありますか?」
料理、適当なものしか作れないし、
テーブルセッティングなんてしたことないし、
何から手をつけたらいいのかさえわからないけど…
言われた事は精一杯する‼︎
「あとは温めるだけなので、座っていてください。すぐにお持ちします」
テーブルの上を見ると、すでにセッティングされており、あとは料理を運ぶだけになっていた。
なんと、手際がいい‼︎
やはり、仕事が出来る人は違うな。
真司は関心しながら席についた。
「お肉とお魚、どちらがお好きですか?」
「?」
「佐々木さんがお肉とお魚、赤ワインと白ワインどちらがお好きか分からなくて…」
「?」
「それで、どちらでも大丈夫なように、どちらも用意したんです…」
「え‼︎‼︎両方ですか⁉︎」
「はい…両方…」
肉と魚料理どちらもなんて…
どれほど時間をかけてくださったのか…
「もちろん、両方いただきます‼︎」
「え…でも、量…多くなりますよ…」
立花は少しすまなさそうだ。
「立花さんが作ってくださったものは、全部いただきたいです‼︎」
「では、用意しますね」
嬉しそうに笑いながら立花はキッチンに向かった。
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