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甘い唾液 1
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「今年のバレンタインは何がいいですか?」
珀英がキッチンの流し台で夕飯の食器を洗いながら聞いてきた。
季節は冬。今年は暖冬の影響で雪も降らず、底冷えする感じもなく、冬のくせに暖かいと言いながら珀英は密着してくる、暑苦しい冬。
お正月が終わり、もうすぐ2月になるという日の夕飯後に、珀英が不意に切り出してきた。
オレはさっきまで珀英の作った、和食中心の美味しい夕飯を食べていたテーブルに頭と胸を凭(もた)れかからせて、残っているビールをちびちび飲みながら、珀英を眺めていた。
「バレンタイン?・・・もうそんな季節か・・・」
「くすくす・・・そうですよ」
「早いなー」
「おっさんっぽいから言わないほうがいいですよ」
「どうせ・・!!」
オレは頭を上げると少しだけ残ったビールを一気に飲み干す。
暖房の効いた部屋で、珀英の作った美味しい夕飯食べて、美味しいお酒飲んで、明日は一日仕事ないからのんびりできる。
珀英とゆっくりご飯食べたのも一週間ぶりくらいだった。取材やら打ち合わせやらで、なかなか会えなかったから、今日は久しぶりにゆっくり一緒にいられる。
最高の気分で、少し酔ったらしい。
オレは空いたグラスを洗い物をしてくれている珀英の所まで持っていく。
珀英は今日は完全にオフだったから、ジーパンに黒いタートルネックのセーターという、完全に適当な服装でいる。
それでも180センチを越す長身と、背中のなかほどまである綺麗な金髪を一つにまとめて縛って、すっぴんだけどハリのある綺麗な肌と男らしい精悍(せいかん)な顔立ちのせいで、モデルみたいに格好いいと。
悔しいけど思う。
オレは部屋着に着替えていて、珀英が買ってきたグレーのスウェットを着ていた。自宅ではこのくらい気の抜けた格好のほうがいい。
それにこのまま寝れるし。
珀英がオレの気配に気がついて、グラスを受け取ろうと、すぐ隣まで来たオレに微笑みながら手を差し伸べる。ほんのり微笑みながら、まるでオレの手を取ってキスでもするんじゃないかと思うくらいのスマートな動作。
その様子もなんか格好よくって、むかついた。
珀英のその大きな手にビアグラスを渡して、オレはそのまま流し台に寄りかかって珀英が食器を洗い終わるのを待つ。
「・・・一昨年作ってくれた、あのケーキがいい」
「ああ、ガトーショコラですか?いいですよ」
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