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第56話 ー接触 ③ 伊吹sideー
「伊吹‼︎‼︎」
全速力で走りながら、大声で伊吹の名前を呼ぶ蒼の姿があった。
「蒼、どうしたの?そんなに慌てて……」
酷く慌てている姿の蒼を見て、伊吹は驚く。
「孝……司さん…。伊吹に…何か…用ですか?」
伊吹のところまで走ってくると、ギュッと伊吹を自分の方に引き寄せ、肩で息をしながら蒼が孝司を睨みつけた。
「ちょっと伊吹くんに用事あってね」
孝司は蒼の睨みなど、何もないかのように微笑んだ。
「‼︎用事なら、俺が聞きます」
少しずつ冷静になってきたのか、睨まなくなったが孝司への警戒は解いていない。
「いや、今日はやめておくよ。じゃあまた今度、蒼くん、伊吹くん」
そういうと、孝司は車でその場を後にした。
「伊吹、何があった?」
孝司の車が見えなくなって、はじめて蒼は伊吹の方を見た。
「たいしたことじゃないよ…。柚くんと…」
「柚の事⁉︎」
蒼の眉間にシワがよる。
「それだけ?」
「柚くんと蒼のこと…」
「‼︎」
蒼は驚き、目を見開いた。
「それで、何か言ったの…か?」
「いってない。言う前に蒼が来たから…」
本当は孝司さんの話がどんなだったのか、聞きたかったけど……
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