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その男、神宮寺 統①

「ウソだろ......俺がまた今年も、二位だと?」  文化祭恒例の、王子様総選挙。  事前に女の子達にちゃんと根回しもしておいたから絶対に一位を獲れると思っていたのに。  ......掲示板に貼り出されたその結果を見て、愕然とした。  二位は俺、山田 太郎。  ネタなどではなく、これは正真正銘俺の実名である。  覚えやすい名前の方がいいだろうという至極単純な理由で、親父につけられた。  確かに一度聞いたら忘れられないとは言われるが、残念ながらこの名がありがたいと思った事は、これまで一度たりともない。  そして昨年同様、今回も一位に選ばれた男の名は、神宮寺(じんぐうじ) (すばる)。  名は体を表す、とは良く言ったもので、金持ち揃いのこの校内でも群を抜くセレブリティ。  統という名前からも推測出来るように、彼は人々を統べるべく生まれてきた存在。  神宮寺グループの現社長の長男であり、次期後継者と言われている。  親父が運良く成り上がっただけの成金の俺とは違い、生粋のサラブレッド様なのだ。 「あっれー?山田くーん。  去年に続き、今回も二位なんだ?  ......二位が、好きなの?」  いつもは君付けでなんて、絶対に呼ばない癖に。  嫌味ったらしいちょっとハスキーなバリトンボイスが聞こえたかと思うと、背後から羽交い締めにされた。 「出たな、性悪神宮寺!  ......でもこれで勝ったと、思うなよ!」  彼の鼻先に人差し指を突き付け、それだけ言って彼の巨体を振り払い、勢い良く駆け出した。

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