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その男、神宮寺 統③

 一夫多妻制を許された国の王族様かと見紛うばかりのハーレムっぷりのあの男の姿を脳裏に思い浮かべると、自然と眉間にシワが寄るのを感じた。  すると孝明はニヤニヤとゲスな笑みを浮かべ、答えた。 「そりゃ、居るだろうよ。  今は確か、三組の二階堂さんと付き合ってるんじゃなかったっけ?  二階堂さん本人が嬉しそうに、触れ回ってたし」  二階堂さん......だと!?  我が校の人気NO.1美少女までもが、まさかアイツの毒牙にかかっていたとは。  俺も以前一度デートに誘ったが、歯牙にもかけられなかったと言うのに。  ワナワナと、怒りに震える俺。  それを見て孝明は呆れた様子で俺の肩にポンと手を乗せ、言った。 「アイツと競おうとするのは、もうやめとけって。  お前もそこそこのレベルではあるが、なんつーか......階級が違う。  例えるなら、あれだ。  ミニマム級のアマチュアボクサーが、ヘビー級の世界チャンピオンに無謀にも挑んでく感じ?」 「......誰がミニマム級の、アマチュアボクサーだ。  絶対俺にだって、アイツに敵う事がひとつくらいはあるはずだ!」  鼻息荒く、絶叫した。  そして運悪く、そのタイミングで。  ......嫌な気配を感じて振り向くと、執事姿の神宮寺 統その人がクスリと笑った。 「本当に懲りないですよね、山田様。  でもそういうところ、嫌いじゃないですよ?」  スッ、と俺の頬に触れた、白い手袋越しの彼の手のひら。  周囲の女子達から、キャーっという黄色い歓声があがった。

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