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第1話

 「姫は本当に美しい」  ピチャピチャと舐められながら囁かれた。  姫は散々指で広げられた穴を舐められすすりなく。  指でもそこを弄ることを男は楽しんだのだった。    男は指だけでは足りずに、今はその穴を舐めまわしている。  蜜でも溢れる場所かのように。  不浄なその場所を。  汚い。  姫はそう思った。     でも。  感じた。  そこだけでもイけるのだ。  姫は。  精通を覚える前にそこで受け入れることを覚えたから。  姫の幼い身体を、泣いて逃げようとする身体を押さえつけた男は、今、姫を抱いている貴公子などではなかった。  姫をこんな貴公子達が使えるようにするための調教師だった。  許して。  幼い姫は泣いた。  姫は、いや、その時はただ美しいだけの普通の少年だった。  少女の姿はさせられていても。      でもその懇願が許されるわけがなかった。  そのために姫は育てられたのだから。  服さえ着なければ少年だったのに、調教師は服を剥いだその身体を女に変えにきたのだった。  押さえつけられて、まずは穴からおしえられた。  舐められ、弄られ、広げられ。  延々と責められ続けたのだ。  無表情なその男は力が強くて、姫は手足を縛られ抵抗出来なくし、脚は広げられたまま固定されたのだった。  その脚を持ち上げて、男はその痩せた小さな尻に顔をうずめ舐め、指をいれ、嬲り続けた。  まだ出すことも知らない性器が勃起するまで。  姫はずっと泣き叫んだ。  それが姫の幸せだと疑いもしない翁と媼はその部屋に入ってこようともしなかった。  姫は何度も何度も助けを求めたのに。    竹林に捨てられていた赤子があまりにも美しく、ふたりは男に見える身体でさえ、天人の証だと思いこんだのだ。  こんな美しいのだ。  男なわけがない。  きっと高貴な生まれだ。  天人の女性なのだ。   きっと沢山の貴公子達に愛される。  そして、富を我々にもたらしてくれるだろう。  それが二人の考えだった。  だから姫として育て、女にした。  貴公子達が抱けるように調教師も手配した。  調教師は、黙々と仕事をした。  姫が泣いてもゆるさず、懇願してもゆるさず、ひたすら身体を変え続けた。  その穴が女になるように。  何日もかけて。    抵抗を諦めてからは縛られなくなった。  油を浸した指で穴を弄り、そこでイけることを教え込んだ。  姫は細い声をあげ、出すことなくイった。  まだ精通も知らなかったのに。  張り形をつかって広げていった。  小さなものから徐々に大きく。  最後は自身の性器を挿れて教え込まれた。   さすがに大人のモノを受け入れイケるようになる訓練は時間がかかり、姫は何度も気絶した。  でも許されなかった。    出来るまで。  泣いても挿れられた。  その穴が傷つかないように最新の注意は払われたが。  気絶するまで、その穴の使い方を教え込まれた。  擦られる気持ち良さから始まり、自分で締め付け絞りとることまで。  幼い少年に淫らな性技を教え込んだのだ。  身体を緩め、奥の奥まで受け入れる方法も。  奥を開けられ、気絶しても、またこじあけられ、そこを責められないと満足できなくなるまで、そこで出してと強請るまで、責められた。  そして、奥をこじ開けれるのを喜び、自分から腰を振るようになるまで、仕込まれた。  気持ちいい、気持いい、もっと  と泣くように。  穴は女のような形に変わり、性器になった。   大人の男を受け入れるための。         乳首も変えられた。  舐め、指で弄るところからはじまり、糸で縛ってしびれさせ、それを噛まれた。  ただ痛くて泣いていたはずなのに、小さかった乳首が尖り膨らみ、そこだけでイける身体にかえられた。  常に尖り、膨らんだいやらしい乳首は股間の性器より感じやすい性器になった。  後ろの穴と同じように、男のモノではないように形を変えて。  毎日泣いても許されず、なだめるようなキスだけが優しさみたいで、それにしがみついていたのに、その絆さえ、仕込みの一つで、キスから口の中の気持ち良さを教え込まれていた。    男の性器を舐め、咥えることを覚えさせられたとき、キスで教えられた気持ち良い場所を性器で擦られ陥落した。  男のキスは咥えててもイケる身体をつくる手段だったのだと知った。  優しさなんかなかったのだと、毎日毎日自分を抱く男は全く優しくなかったのだと知ることも、姫になる為に必要だったのだと知る。  喉の奥までくわえ込み、苦しみ、でも、感じてイッた。  まだ子供だったのに。   教え込まれた。  ありとあらゆる快楽を。  苦痛にすら溺れる淫らさを。  淫らな穴。  淫らな乳首。  淫らな口。    もう少年はいない。   抱かれるための生き物がいた。    「お前なら帝さえ溺れるだろう」  調教師は最後に囁き満足した顔をした。  そして、もう。  姫への興味を無くしていた。  つくりあげたならもう、いらないのだと知った。  身体を作り替えられた男に無用のものとされてこそ、姫が完成した。  誰が相手でも同じになったから。  誰に抱かれても感じる身体をつくりあげられ、姫になり、それから貴公子達に抱かれている。  求婚と言う理由で抱きにくる貴公子達に。  姫。  天人。  それは。  娼婦の違う呼び名だった。  女であって女でないものの。  「こんなに雌しべを立てて・・・可愛い」  貴公子は姫の性器をしゃぶる。  みんなここを舐めたがる。  女ではないからいいのだ。  普通の女ではないから。  姫は吐息をあげて、身体を震わせる。  感じても、そう簡単には乱れすぎない。  むしろ耐える姿に貴公子達はそそられる。  貴公子達は姫の出したものを喜んで飲み、穴を舌でほじり、穴を自分の性器で満たす。    「姫・・・愛してます、姫・・・」  狂ったように腰をぶつけられたなら、姫は哀れにとうとう乱れてしまう。  耐え忍び、でも忍びきれず、そらせらる細い背中。  丸まり力の入ったつま先。  貴公子達の背中に爪を立ててしまう。  耐えているのに、腰が揺れ、顔を隠そうとそらし、唇を噛み締める姿にこそ貴公子達は欲情するのだ。  責めて責めて、抉り貫き、鳴かせ続けて、とうとう、声を殺さなくなる姫が見たいがために、朝まで狂うのだ。    どんなに上品ぶったところで、姫の小さな口に咥えさせ、喉まで犯すのが大好きなのだ。  姫の衣の前を明け、その男の性器を持つ、細い身体を初めて見た時の男達の顔は皆同じだ。  普通の女ではないのが、たまらない。  普通の女ならもう飽きた。  この、真っ白で平らな中に咲く、淡く色ずく乳首はどんな味がする。  女の股にはないこれは、男のものとは思えないほどいやらしい、舐めたらどう鳴くのだろうか。   後ろの穴。  女のモノなら前も後ろも使ったが、この後ろの穴はどうだろう。  女のモノのように形を変えていて、旨そうにくわえ込みそうだ。  唇も犯そう。  薄い唇を無理に広げて咥えさせて細い喉を犯したい。  みんな考えることは同じだった  それが貴公子だから。    ただの男だ。  欲望だらけの。  まだ幼い姫だって彼らは喜んで抱いたのだ。    痩せた腰を掴んで、奥まで犯して。  「あなたは天人だ。素晴らしい」  そう囁き、明け方にぐったりした姫を抱きしめられても姫には何も聞こえない。  「どうか私だけのものに」  その言葉に応えることはない。  誰でも同じだから。  どうしてもと煩い貴公子には難題をだす。  「仏の御石の鉢」、  「蓬莱の玉の枝」、  「火鼠の裘」、  「龍の首の珠」、  「燕の産んだ子安貝」  それを手に入れるために貴公子達が死んだり、身を滅ぼしたとしても姫にはどうでも良かった。  彼らは好きにこの身体を使ったのだ。      夜に忍びこんで来て、好きに身体を貪って。  捧げ物と歌を送ってくる貴公子達に姫は興味がなかった。  教え込まれた身体は、どんな風に抱かれても感じて鳴いて乱れてみせたけれど。  とうとう帝も姫の噂を聞きつけた頃だった。  賊が家に忍び込み、翁と嫗を殺した。  使用人達も。  そして、貴公子達から贈られた財宝を奪っていった。  姫はそれを何も感じず見ていた。  どうでも良かった。    殺されても構わなかった。  育ててくれた翁と嫗の死にもなんとも思わなかった。  求めた助けを聞いて貰えず、犯された時にそんな感情は死んだのだ。    「綺麗なもんだなこれが噂の天人か」  盗賊の頭は姫を観て笑った。    また犯されるのか。   盗賊でも貴公子でも同じだった。  「・・・何て目だ。お前はここに繋がれていたのか」  盗賊の頭が言った。  姫の目に絶望を見たのだ。  姫は驚く。  姫の美しさ以外に目をやったものなどいなかった。  「逃がしてやろうか?」  姫に頭は言った。  誰かが何かを聞いてくれたことはなかった。   だから姫は差し出された手をとった。  育ての親の血で汚れた手を。  抱かれる意外には何も出来ない身体を支えられ、抱き抱えられ、連れ去られた。  その夜。  生まれて初めて、自分から抱かれた。  この身体しか与えるものがなかったから。    頭は困ったような顔をした。    布団に潜り込んできた姫に。  でも。  姫があるだけの感謝を伝えようとしているのを理解した。  それしかないことも。  「可哀想だな。お前」  そうため息をついた。  でも、抱いてくれた。    受け取ってくれた。  姫が男なことに驚いたけれど、止めなかった。    「オレは男の方が好きなんだ」  頭は笑ってそう言って、姫を男して抱いた。  妖しい、いやらしい女よりいいものではなく、男として。  頭は姫に夢中になったけれど、痛ましそうな顔をしていた。  同情だった。  同情じゃなければ抱かなかったのがわかった。  だから。  嬉しかった。  誰も同情なんかしてくれなかったのた。  淫らで美しい抱くためのもの。  それが姫だった。    「可哀想に。綺麗に生まれたばっかりに。可哀想に」  そう言いながら、腰を使われ、優しく髪を撫でられる。  家を襲った盗賊に。  「逃がしてやっても・・・もうお前普通に生きられないかもな。どうするもんか」  奥をこじ開けながら、頭は姫の行く末を案じる。  そんな男は初めてで。    姫はわらった。  長く笑ったことがなかったのだと自覚した。  「笑った方が可愛いぜ」  頭はそう言ってから奥に出した。  姫はイキながらまた笑った。    綺麗だ。   美しい。  そう言われても、可愛いなどと言われたことがなかったからだ。    そこからは姫から求めた。    自分から咥え、自分から跨がり腰を振った。  この男が欲しいから。  快楽ではなく。    頭は笑って好きにさせてくれた。    姫は生まれて初めて恋をした。      頭は姫を面白がり、何も出来ない姫を置いてくれた。  姫から布団に潜り込んだが、たまには向こうから来てくれた。    だが、帝は姫を諦めていなかった。  姫が欲しくてたまらなかった。  あの天人がほしい。  女など二度と抱けなくなるほど甘い穴を持つという。  この国で一番高貴な自分のための穴だろう。  だから。  追っ手の兵士を送った。  たかが盗賊なんかのために、国の最高の軍を。  盗賊達はあっと言う間に追い詰めれた。  でも、誰も姫を差し出せとは言わなかった。  殺して奪う彼らにも道義がある。  仲間は捨てない。  姫を仲間として認識していた。  頭が拾ったのだから。  みんなそうだったから。  頭も姫を差し出そうとはしなかった。  頭は言った。  「そこまで可哀想な真似はできねぇよ。ずっと飼われて、売らされて。やっと逃げれたのにまた飼い犬にされるくらいなら殺してやるよ」  頭は優しかった。  でも。  もうこの先逃げる場所などない。  優しいこの人に仲間を殺させたくなんかなかった。  だから姫は、追っ手達の前に姿を表した。  美しい姫。  髪をたなびかせ、月を背負う。  頭の止める声が聞こえた。  追っ手を率いるのは帝だ。   兵士を制して、姫に見とれる。  こんな山奥まで自らくるとは。  一刻も早く抱きたかったのだろう。  奪ったその場で犯すつもりだったのかもしれない。  姫は崖に立っていた。  帝達は下にいる。  くれてる。  こんな身体など。  頭が追ってくる。    姫がしようとすることに気づいている。    姫はふりかえり、その人に笑った。  何を捧げられても、何を誓われても見せることのなかった微笑みだった。  姫は幸せに笑った。  幸せだった。    恋とは良いものだ。  恋するということこそが。  この恋を姫は愛した。  走ってくる男と同じくらいに。  そして、月に手を伸ばし、飛んだ。  帝たちには天人が空へ上がったかとその瞬間思ってしまうほど美しい光景で。  でも。  姫は当たり前に落下し、帝達の足元でひしゃげた肉体になった。  帝は甘く味わう肉体がなくなったことに悲鳴をあげて。  騒然となり。  盗賊達は逃げ延びた。  でも、あまりにも美しい姫が空へと跳ぶ瞬間は語り継がれ、違う物語になった。 終わり            

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