2 / 87

プロローグ

〜12years ago(12年前)〜 「パパ!!ママ!!お兄ちゃん!!どこ?!」 私は必死で両親と兄を探していた。 絶え間なく聞こえる銃弾の音。 爆発音。 火薬の匂い。 砂埃。 今でも全部覚えてる。10歳だった12年前のあの日を。 「ダイヤモンド!!」 「お兄ちゃん!!」 兄は物陰に潜んでいた私に駆け寄る。 「お兄ちゃん、パパは?ママは?」 「ダイヤモンド、いいか、良く聞くんだ」 兄は両手で私の頬を掴み真っ直ぐに目を見た。 「パパ?ママ?どこなの?お兄ちゃ、、、」 涙で兄の顔が滲む。 「ダイヤモンド、よく聞くんだ、ダイヤモンド!!俺の目を見て!目を見るんだ!!」 「おにぃちゃん」 「俺が彼奴らの気をそらすから、丘を一気に駆け下りて町まで行くんだ!!」 「おにぃちゃん、いっしょ、、にっ、、、ひとりにしないでぇ、、、!おっ、お願い」 涙と鼻水で、グシャグシャになって兄に縋り付いた。 「ダイヤモンド、絶対に振り返るな。丘を駆け下りて町まで行って身を隠せ」 「おにぃちゃん、、、」 「後から追いかける。お前を絶対1人にしない」 そんな言葉を信じられる程子供じゃない。 「さあ、行くんだ!愛してる!!」 兄は言い捨てると物陰から駆け出し、自ら銃弾の雨の中に突き進んだ。 兵士が兄を囲み、銃を向ける姿を見た。 それが最後の姿。 私は丘を駆け下りて町まで走り抜けた。 心臓が張り裂けるかと思った。 兄が私を追いかけて来ない事も分かっていた。 そして、兄がどうなるのかも。 〜Now (現在)〜 「ダイヤモンド?」 「、、、お兄ちゃん?」 WIAのミーティングルームでうたた寝をしていた所をスティーブに起こされた。 夢か。 久しぶりに12年前の兄の夢を見た。 「大丈夫か?顔色が悪い」 兄が死んでから、今ではスティーブの事を兄の様に慕っている。 「平気!それより、今日はマイクとデートでしょ?早く行ってあげて!」 「本当に平気か?何かあったら必ず連絡するように」 「はいはい、お兄ちゃん!」 「茶化すな」 「本当に大丈夫だから行って!」 「また来週」 「マイクに宜しく!良い週末を!」 ダイヤモンドは、スティーブが帰ったのを見届けるとミーティングルームを抜け出しワンフロア上の資料室へと向かった。 周囲を警戒しながら資料室の電子ロックを解除する。 電子ロックの解除コードは2日前に手に入れた。 廊下の監視カメラに気をつけながら資料室へ入ると、パソコンを立ち上げる。 ダイヤモンドの機密情報アクセス権限はレベル4。閲覧出来る情報には限界がある。 資料室のPCならレベルアラートを回避して閲覧出来る資料が格段に増えるのだ。 検索バーで「カルメルタザイト」に関する資料を探す。 するとWIAのいくつかのファイルにヒットした。 カルメルタザイトとは地球上で最も硬い鉱石であり、最も希少な鉱石だ。 青く美しい色、ダイヤモンドよりも硬く結晶密度の高いその鉱石は何億ドルもの価値がある。 そして私の皮膚と同じ成分。 私の一族は、皮膚をカルメルタザイトに硬化させる特殊な能力を代々受け継いで来た。 歩く宝石の私達一族は常に狙われ続けて来たのだ。 幼少期は興奮したり危険を感じると皮膚が硬化するが成長とともに自分でコントロール出来る様になる。 ダイヤモンドも普段は、普通の人間と同じ皮膚の色だ。 「モルドバ事件、、、見つけた」 12年前、私の故郷モルドバ共和国で起きた事件。 私の一族が根絶やしにされた事件。 ずっと犯人の手掛かりを探して来た。 ファイルにはいくつかの電子ファイルと写真があった。 「犯人は、、、カサドールと名乗る謎の暗殺組織、、、?」 狩人をモチーフにした矢を射る男が描かれたカサドールのシンボルマークの資料写真がいくつかあった。 「カサドール、、、確かポルトガル語で狩人。絶対に見つけ出す」 ダイヤモンドは怒りに震える手を握りしめた。

ともだちにシェアしよう!