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第58話(スティーブ)

飲み物を持ってホールを出ようとした時、突然銃声が鳴り響いた。 「なんだ」 入り口とホール傍の通路から武装した男達が威嚇射撃を始めた。 すぐに臨戦態勢を取ろうと身構えた時、視界の隅にナディール議員を見つけた。 「まずいな」 潜入捜査でティムというMCUの社員になりすましたばかりだ。 ここで戦闘に加わればすぐに一般人じゃないと見破られてしまう。 潜入捜査でナディール議員のパソコンへ仕込んだコンピュータウィルスからは少しずつだが違法な証拠が見つかり始めたばかりだ。 躊躇っていると武装集団は更なる武器を構え発砲した。 今度は威嚇射撃ではなかった。 銃身の長い武器でパーティー主催者のトム•コーヴィンのセキュリティを吹き飛ばした。 しかも、一瞬で人間を液状化させる武器だ。 これ以上、被害を出す訳にはいかない。 敵を倒そうと逃げ惑うパーティー客を縫うように近づいた時、突然雷鳴が響いて目の前の武装集団の1人が吹き飛ばされた。 「なんだ?!」 音のした方を振り返ると若いアジア系の少年がいた。 電撃を放った少年の瞳は青白く発光している。 「ネオヒューマンズか?」 そこからは手当たり次第に少年は電撃を放ち人間を吹き飛ばし始めた。 そしてそのうちの1人が一段と遠くまで飛びデッキまで飛んだ。 そんな!!まさか!!! 「マイク!!!!」 デッキへ駆けつけようとした腕を掴まれた。 「だめだ、エージェント•ワイルド!マイクは私が救出にいく! 君は少年を止めるんだ!!このままじゃ船ごと沈むぞ」 エージェント•ハワードだ。今日はハワードも夫婦で乗船していた。 「マイクが海へ落ちたんです!!離して下さい。腕を折られたくなかったら」 「今は少年が先だ。彼は恐らくネオヒューマンズだ。しかも覚醒したばかりの!危険すぎる!今、この場を収拾できるのは君しかいない」 今すぐマイクを救出に行きたい。 僕には世界中の誰よりもマイクが大切で、マイクは僕の全てだ。 彼が居ない世界で生きる事はもう僕には出来ない。 「このままじゃ、ここにいる全員が死ぬ!!」

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