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第60話(トム)
金髪碧眼の美しい男は一撃で武装した大きな男を薙ぎ倒す。
俊敏な動き、力強さ。どれも普通の男じゃない事は明らかだ。
銃を向けらても怯まず、姿勢を低くしたかと思うと目にも止まらぬ速さで距離を詰めた。
銃口を掴み、上に向けるとそのまま背負う様に倒し武器を奪う。
身体を捻り鮮やかに繰り出したパンチの威力は最早、異常だ。
そして、あっという間に武装集団を制圧すると男はカイトへと向かう。
まずい、カイトが危険だ。
【ダメだ】
【カイトには近づくな】
【カイトに近づくなぁーーー!!!】
すると男の動作が止まった。
数秒、身動きせず止まっていたが、また動き出すとカイトではなくこちらへ向かってくる。
「頭の中に直接話しかけられるのか?君もネオヒューマンズなのか?」
ネオヒューマンズ?
「そんなものは知らない」
「少年を止めるには君の力が必要だ」
「どういう事だ?」
「説明している暇は無い!
少年は恐らくネオヒューマンズという能力者だ。覚醒したばかりで力のコントロールが出来なくなった暴走状態。彼を止めるには、僕が倒して意識を失わせるか、君が直接頭の中に入って呼び戻すしかない」
「わ、分かった。やってみるから君は下がってくれ。カイトを傷付けないでくれ」
頭の中に話しかけるのなんて、やった事はない。いつも一方的に相手の頭の中の声が聞こえて来ただけだ。
「カイト、、、」
【カイト】
お願いだ。僕は君を愛してしまった。
【カイト】
まだ生きられるなら、君と居たい。
【カイト、目醒めるんだ】
戻るんだカイト!!!
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