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罠にはまる ★
宗介を押し返そうとする両手には力が入らなかった。抗おうとすると、そのタイミングを見計らって、宗介が強く右手を動かすのだ。
「あっ……あっ……んっ……はっ……」
「新太、声抑えて」
「んうっ……だって……あっ……」
俺は自分の右腕で口を塞いだ。どうしたって、声を出さずに耐えられるわけがない。
「んっ……んっ……」
右乳首を舐めながら、じっと宗介が俺の反応を伺う。目が合った。宗介が唇を離した。
「……新太」
名前を呼ばれて、目だけでなんだと答える。
「さっきの質問に答えてないんだけど」
そう言われて、右腕を外して聞き返した。
「何?」
「他の誰にされても……こんなエロくなるわけ?」
「…………」
宗介の手の動きが止まる。強気な態度とは裏腹に。不安そうな宗介の瞳とぶつかった。
ほんとに。この男は面倒くさい。嫉妬深くて、我が儘で。心配性で、甘えたで。
でも。
いつも正直に真っ直ぐ気持ちをぶつけてくれる。
俺はぐっと体を起こした。宗介に近づいて、ちゅっ、と軽くキスをした。
「……知ってんだろ? 俺は、宗介としかこんな風になんない」
「新太……」
宗介が嬉しそうに笑った。2人の間に甘い空気が流れる。
が、次の瞬間。
「はい、時間切れ」
そう言って、宗介がさっさと俺の下着に忍び込ませていた手を抜いて、立ち上がった。
「……は?」
「いや、だって。新太、もう午後の診療始まるだろ?」
「そうだけど……でも……」
俺のアソコはまだ元気なままだったし、体も熱が籠もったままだった。そんな自分の欲をうまく処理できずに困った顔で宗介を見上げる。
宗介はいつも意地悪な時に見せるニヤッとした笑顔を俺に向けた。
「新太、その気になっちゃった?」
「その気にって……お前がさせたんじゃん!」
「でも、もう時間ないしー。どうしても新太が続きしたいんだったら……」
「……なんだよ?」
「今夜まで我慢して、俺ん家来たらしてやるよ」
「…………」
そう言い放ち、宗介は俺の返事も待たずに、じゃあな、と鍵を開けてさっさと外へと出ていった。
あの野郎……。
「……やられた」
最初からそのつもりだったのだ。朝、約束したのに。今夜はちゃんと休むって。なのに。結局は俺の気遣いなんて全く無視で俺を呼びたかったのだ。
でも、呼んでも俺が素直に来ないだろうと踏んで、こんな半強制的な作戦を取ったのだ。
当直室を借りてちょっといちゃいちゃしよう、ぐらいのことは宗介ならやりかねないので予想はできたけど。まさか、俺を夜まで焦らさせて、家に来させようと考えるなんて思ってもみなかった。
くっそー。
「ぜっっったい、行かねーからな!」
そう誰に言うでもなく声を上げると、俺は近くに落ちていた昼食のパンを拾って宗介の出ていった扉へと投げつけた。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。試し読みはここまでです。続き(加筆・修正版になります)は電子書籍で公開しております。もしご興味のある方がありましたら、ぜひ電子書籍の方をご検討いただけると幸いです。
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