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強く 抱きしめて 19
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あれから一ヶ月が経っていた。
親子鑑定をするべく、センターからキット一式を送ってもらい、お父さんとお母さんに転送して、爪や髪の毛などの検体を送り返してもらった。
二人とも特に文句も言わず、素直に送り返してくれていたのが、ちょっとびっくりだったけど、これも剛さんが説得してくれたおかげなのかなって、思った。
結果が出るのを待って、じりじりしながら、はらはらしながら、待って。
結果を記載した書面が、ボクの手元に届いた。
これを、一人で開ける勇気は、なかった。
それを剛さんに伝えると、剛さんは、二人にも見てもらうべきだと言って、二人に連絡して、都合のつく日を調整すると、ホテルを予約してそこに二人とも呼び出していた。
喫茶店とか他人の目がある所は絶対に無理だから、他人が入ってこれないように、ホテルを予約して、16時に待ち合わせをした。
ボクは何もできなくて、剛さんに丸投げしてしまっていた。
本当に・・・もっとしっかりしなきゃいけないのに・・・全然ダメ。
剛さんに甘えっぱなしで、頼りっぱなしの自分が不甲斐(ふがい)なくて、情けない。自分のことなのに、恐くて恐くて仕方なくって、頭がまともに働かない。
頑張らなきゃ・・・もっとしっかりしなきゃ・・・わかってるのに、わかってるのに・・・!
戦々恐々(せんせんきょうきょう)としながら、その日が来るのを待って、とうとう当日。
明日大学の卒業式を控えたボクと、仕事を休んでくれた剛さんは、予約したホテルにチェックインして、開封していない鑑定結果の封書をホテルの部屋のテーブルに置いて、お父さんとお母さんが来るのを待った。
恐くて、恐くて。ボクはベットに座って、足を肩を、歯をガクガクと震わせて二人を待っていた。
剛さんは、そんなボクを見て、そっと隣に座ると、ぐいっと肩を引き寄せて抱きしめてくれた。
それだけで・・・それだけなのに、ボクは安心できて、深く深く、肺の奥まで呼吸をすることができた。
剛さんの温もりを感じながら、心の底から安堵(あんど)して、深呼吸を何回か繰り返した時、部屋のドアがノックされた。
剛さんがさっと立ち上がって、ドアの鍵とチェーンを開けると、お父さんとお母さんの二人が立っていた。
「あ・・・別に待ち合わせなんかしてないわよ!たまたま階下(した)で会ったのよ!」
誰も聞いてないのに、お母さんがちょっと頬を赤らめながら、大きめの声でそう言った。
お父さんがさっと、廊下を左右見渡して、
「いいから、入りなさい」
と言って、そっとお母さんの背中を押して部屋に入れる。お母さんは、慌(あわ)てたように口元に手を当てて、
「やだ・・・ごめんなさい・・・」
と頬を赤くして声を上げてしまったことを、お父さんに謝っていた。
艶やかで、少女のような純真な表情、それでいて全ての男を狂わせる色香と仕草。それら全てが圧倒的に魅力的で、ボクは本当にこの人の子供なのかと疑問に思うほど、美しく、綺麗だった。
ボクも剛さんも何も言えなくなっているけれど、お父さんは慣れているのか、全く動揺せず、淡々と、
「もういいから・・・大丈夫」
そう言いながらお母さんの背中を支えながら、部屋の中まで入ってきた。剛さんはそんな二人を微笑ましく見つめながら、何も言わずに戻ってきて、ボクの隣にそっと立つ。
ボクも急いで立ち上がって、二人が部屋に入ってくるのを迎えた。
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