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「お久しぶりです、陽人様。洗車してる時間がなかったので、汚れていて申し訳ありません。気を付けてお乗り下さい」 「ありがとう、春日。せっかくの休日なのに、ごめんね」 「いいえ。ちょうど、こちらの方面へ遊びに来ておりましたので。陽人様にお会いできて、とても嬉しく思います。ご学友の方も足元に気を付けてお乗り下さい」 「あっ……はい……」 老年の男性に言われるまま、黒いセダンの高級外車の後部座席へ乗り込む。洗車してないなんて詫びてたけど、細かい所まで手入れがされていてとても綺麗だった。 腰がガタガタの俺の為に、陽人が父親の住まいの有働家で執事をしている春日さんを呼んでくれた。ちょうど休みだったらしく、有働家がある県都ではなく、山へダムを見る為に県北の方へドライブに来ていたらしい。ダム巡りが趣味みたいだ。 執事だけでなく運転手も兼任している為、有働家で用意した高級車を貸与されているらしい。 高級な車に乗るのが初めてで、汚さないかひやひやしながら慎重に座った。黒の上質なレザーシートは座り心地が良く、広くてゆったりとした作りのラグジュアリーな車内だった。 陽人は馴れてるみたいで、普通に寛いでいる。王子様みたいな陽人には、こういう高級な物がすごく似合っていた。ただシートに座っているだけなのに、風格があってすごく絵になった。 ーー陽人……似合っててかっこいい…… 思わず見とれてしまっていると、「どうしたの?」って陽人に声をかけられた。慌てて視線を外し「何でもない」ってそっけなく返事をした。 俺達がシートベルトをつけると、春日さんは方向指示器を出し、丁寧なハンドル捌きで緩やかに発進した。 「ダムはどうだった?」 「貯水量が少なめでしたが、新緑が美しくて、とても雄大な景色で……とても心が洗われました。それよりも……陽人様、何か良いことがありましたか?」 「えっ……春日わかるの?すごく、良い事があったよ。ずっと願っていた事が漸く叶った……みたいな。ね、柚希」 「あっ……まあ、そうだね」 「それは、良かったです。私が今まで見た中で、一番良い表情をされていたので……久しぶりにお会いできた上に、陽人様が幸せそうで何よりでございます」 「ふふふ、ありがとう。俺も春日が元気で若々しくて安心した」 「ただのしがない年寄りです」 春日さんはロマンスグレーの髪をオールバックでカチッと整えていて、姿勢も正しく贅肉のない引き締まった体をしている。俺から見ても、とても若々しく感じた。 「着きました。陽人様は、ご学友のお家へ寄られるんですよね?私は久美様にご挨拶してから帰ります」 「ありがとう。母さんも春日の顔を見たら、喜ぶと思うよ。遠慮しないで、ゆっくりしていってね」 「ありがとうございます。お気を付けて行ってらっしゃいませ」 陽人の家に横付けし、ハザードを焚いた車から降りて、陽人と寄り添うようにして歩いて家へ入った。春日さんは俺達が門へ入り、姿が見えなくなるまで、最敬礼でお辞儀したままだった。 玄関の前に立ち、解錠して中へ入り、鍵をカチャリとかけた。 どちらからともなく抱き合い、唇を重ね合わせ、激しくディープキスをした。舌を絡めたまま、スカートのホックを外し、パンツを脱いだ。待ちきれない陽人のベルトを外し、ペニスを曝け出すと俺の身体を返し、バックから勢いよく突き刺すように挿入してきた。外に聞こえないように、声を圧し殺す為に自分の腕に噛みついた。それでも鼻から甘い声が漏れ出し、微かに聞こえる俺の声に、陽人が興奮しているのがわかった。 玄関で、浴室で、ベッドで、また浴室で……二人で気を失うまで、何度も何度も抱き合った。

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