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―8月11日月曜日―

自分が大人だと言うのなら どうして大人げない態度を出してしまったのだろう。 高校生を子供だとバカにするのなら その子供を謀らずとも傷付けた自分は大人と言えるのだろうか。 直弥は毎日考えている。 大介に会う前、杞憂だった事も忘れ。 自分が大介位だった頃、真意を尋ねられ本心を伝えると、適当に返された。そんな大人が大嫌いだった。 正直に反論されたり怒られたりされた方が嬉しかった。 そんな嫌いだった大人に、知らず知らずになっていたのかと、また考えてしまう。 *   *   * 翌日、直弥が会社を出ても大介の姿は無かった。 怒って帰って行った大介の背中を思い出した。毎日待たれていたのは疎ましかった筈なのに。 直弥の姿を見て、安心した様な表情で迎えてくれる姿は見当たらない。 直弥は心に寂しさを無意識に感じ、少し溜息吐き家路へと向かった。 ”会社から無事に出てくる顔が見たいだけだ”と大介は捨て台詞を吐いていた。 ただ行きがかり上拾ってしまったモノに対して、そんなに優しい気持ちを持てるのだろうか? 直弥は自分自身の気持ちを照らし合わせ、ゆっくり首を振る。 (俺にはそんな余裕も優しさもない……) 自分の事で一杯一杯の毎日。 大介が暇だからだろうか? 直弥は少し考えて、再び首を振った。 *   *   * 営業会議やミーティングでかなり遅くなった日は、定時以降外の様子が気になって仕方ない。 闇の中、立ち尽くしている大介の姿がぼんやりと脳裏に浮かぶ。 上の空で時間を迎え、社外へ飛び出しても、大介の姿は何処にもなく。 ここ何日も会ってはいない。 初めてであったのはつい最近。接触をもったのも数える程度なのに、直弥の中で大介の存在がしっかり根付いたのだと、姿の見えない道を見つめながら気付いてしまった。

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