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―8月25日月曜日―

直弥は週末ずっと家に居た。 夏期休暇の時の様に、遙平を待っていたのでは無く。 金曜の夜、大介が飛び出していったドアをただ見詰めて。 だけど、土曜も,日曜もそのドアを開け、再び大介を迎え入れる事は無かった。 *   *   * ――月曜日 外回り中、運転中滅多に苛つかない直弥が渋滞にしびれを切らし、今まで押した事のないクラクションを度々鳴らした。 止めていたタバコも銜えてしまった。 直弥は何度も何度も、飛び出していった大介の背中を思い出す。 会い始めて一度大介を怒らせて帰られたことは有ったけれど、その時とは比べ物にならない焦燥感と絶望感が直弥を襲う。 直弥の中でこんなにも、大介のウエイトが大きくなっていたのかと思い知らされる。 少し空いた道で直弥はアクセルを踏み込んだ。   *   *   * 大急ぎで帰社し、アイちゃんから話しかけられても上の空で、直弥は何時より早く退社した。 足早に歩きながら、大介の姿を探す。 見当たらなかった。 直弥は落胆する暇なく、いつもの筋違いの道へと足を運んだ。 以前、何日か姿を現さなかった間、直弥が探している姿を、何処かで見ていた大介。 その時は見られていたなんて恥ずかしいと思ったけれど、今は何処かで見ていて欲しくて、なりふり構わず大介の姿を探す。 必死で探している自分の姿を見て、何処からか出てきて欲しかった。 「いない……」 直弥の願いも空しく、大介の姿は何処にもなかった。 「ダイスケ」 返事は無いと判っていても、声に出して呼んでる。余計に寂しさが去来する。 ”俺は、そんなに可哀相か?” 直弥が口にした発端の一言。 泣いてしまった事,大介に対して呟いてしまった事は後悔しても間に合わない。だけど、直弥の本心なのも事実だ。 大介に助けられた日、うっすらだけれど覚えている。 大介は始終少し醒めた態度と言動で、直弥を ”性格上拾った” と言っていた。 週明け会社に姿を現した時も、シニカルな態度で少なからずカチンと来た。 だけど会う度、色々な大介を感じた。 直弥が男の癖に男相手に何かがあって荒んでいると判った上で、心配をしいつも見に来てくれた。小さな事でも喜んでくれて,素直に出されるその態度を見て、直弥の心はその度グラリと揺れた。 大介はいつも、直弥に優しかった。 金曜日だって、大介の優しさは変わらなかった。 けれど、以前から直弥の心の奥底で沸々としていた感情。 優しくされればされる程、浮き彫りにされる可哀相な自分という存在。 憐れみや同情で、大介の優しさを受ける事は、直弥にはもう出来ないと思った。じゃあ…… (俺はそれ以上、何を望んでいるのだろう) 直弥は今、大介の姿も,自分の本心の答も、探しあぐねている。

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