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9月1日月曜日

 家を出る前ふと気付き、直弥は壁のカレンダーに手を掛けた。  今日から新しい月。  破り捨てる前、8月 に目を遣る。  予定も何も書かれていない真っ白な1ヶ月…… だけど、予定外な事が書ききれない位起こった。  近年のどの8月より、出来事が溢れかえっていた。 無意識に1日から反芻しかけたけれど、100%遅刻すると気付き、笑いながら直弥は家を飛び出した。  *  *  * 「俺は絶対、認めないからな!」  直弥が朝一番、顔を合わせるなり遙平に投げかけられた一言。  薄暗い廊下でだれも居なかったけれど、遙平は直弥に、宣言しながら去っていった。  直弥は肩を竦め、目を閉じた。  *   *   * 「ナオヤさんよーーーッス!」  ”また明日”  大介が叫んでいた言葉が心に引っかかり、退社後まさか学校が始まっているのにと思いながらも、直弥が覗いた筋違いの道に……大介は、居た。  直弥の方に向かって、ちぎれんばかりに手を振って。  直弥は少し足を止めた。  大介は制服を着ている。当たり前の事だけれど。  だけどその姿を直弥は今日初めて見た。 自分に呆れる。素面ではなかったとは言え、よくも同い年に間違えたものだ。  制服を着た大介は、見まごうことなく高校生で、眩しく似合っている。  気後れし、尻込みしはじめた。  直弥は深く目を閉じる。  浮かんでくるのは、安心した様な表情で笑顔の大介。 (いつもどんな時も何があっても、目を閉じれば大介が待っていてくれる。だから、これから生きて行ける) 「ダイスケ!」  直弥は目を開け、大介の元へ駆け出した。 ―自由研究 夏 おしまいー

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