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2月19日木曜日

*  *  *   羞恥心も沸かない程の怠さから、大介の手によってされるがままになっていた。 「……悪い、ありがとう」 窮屈な衣服から徐々に解放感を得られて、身体が幾分楽になってきた。   後で色々考えるとして…今は頭が回らない。素直に甘えさせてもらおう。本能がそう決めた。      「…ににんがし、にさんがろく、にしがはち…」   ぶつぶつ、呪文みたいな言葉が聞こえてきた。 (熱の幻聴?大介?)   「なに……?」 直弥のベルトに手をかけながら大介は九九をぶつぶつ呟いてる。   「あの…精神統一。ちがう分散?わかんねー ……理性が、ムリ。変な気起こるから…何も考えないように、九九数えてる」   (何回言うんだ、七の段…)    ぼんやりした意識の中 噛み倒して、ぐるぐる同じ段を繰り返し唱えている大介の声が途切れた頃、漸く着替え終えていた。    遠くで、服や荷物を片してくれている音がする。  ほどなく、キッチンに置いてあった薬までもってきてくれて飲ませてくれた。   つけたままだったマスクを取られ、息苦しさがなくなった途端、軽くキスされ直弥は驚く。    「ダ、ダイスケ?、うつる…」 「大丈夫、俺バカだから風邪ひかねーし。てか、うつして早く治れ。」   今は、優しさが心苦しいより、心地よさと心強さが勝っていた。    *  *  *     「お休み、ナオヤさん。 帰るけど、明日来るし。なんかあったら電話くれ、な」    「ダイスケ…ありがとう。」   大介の背中が視界から消えたと同時に、直弥は眠りについた       -明日へ続く-

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