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8月29日土曜日 2年目

「……ッス」 「いらっしゃい」  少し大きめの荷物を持って、大介は直弥の家にやってきた。  8月最終週直弥が会社休みの土日、夏休みの終わり。  夏休み中直弥宅に日参していたけれど、補習があり、直弥の休みはお盆だけ普通の生活で、片手で数えるほどしか泊まりはしなかった。  今日は泊まると、前もって告げられた。  宣言通り大介は、夜に勉強道具と着替えやらを携えてやってきた。  一緒に夕飯を食べて、勉強して 一緒にベッドに入った。 11時前には、二人ベッドに入った。  いつもは大介が壁側だけれど、今日は抱え上げられて直弥が壁側に寝かされた。  雨音が酷くて、時計の秒針がかき消される。  直弥は開けっぱなしの窓をふと思い出し、少し身を起こしたら 片手で身を支える前に、大介が飛び起きた。 「……何?」 「あ、あぁ……雨入るから、窓閉め……」 「何処の?」 「キッチンの流し台の、あの……」 「俺、閉めてくるから」  言葉を返す間もなく、大介がベッドから起き上がり、窓を閉めに行った。 「ありがとう」 「あぁ。うん」  大介は再び直弥の傍らに横たわった。  狭いベッド、いつもなら暑さに加えお互いの体温を感じながら隙もないほど密着しているけれど、今日は傍らという言葉の通りの距離感で。  お互い、まだ眠っていない。けれど会話もない。  一体何時なのかも解らない。時計を見ようとするだけでも、大介は飛び起きる気がして確かめることすら出来ない。  雨音に混じって、たまに車の音が聞こえる。  車道に面してないマンションだし、普段気にもとめない音。  雨に濡れたタイヤの走行音が聞こえる度、大介は僅かに反応し、通り過ぎると息を吐く。  直弥はその様子を肌と空気で感じ取り身を縮めた。 (ダイスケ、お願いだから眠ってくれ)  祈るように大介のTシャツの端を掴み、音無く唇を噛んだ。

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