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第1話

 暑い。  いや、暑いを通り越して、熱い。  三好 廉(みよし れん)は、夏空の下、草むしりをしていた。 「ヤバい。何か、頭もうろうとしてきた」  だが、廉は休まなかった。  自分自身を傷めつけ、しでかした大失敗をそれで揉み消そうとしていた。  汗が筋になって、額から鼻筋へ落ちる。  女子社員が可愛い、とはしゃぐその顔立ちも、すっかり日に焼けてしまっていた。 「おい、ちゃんと休んでるか?」  ふいに声が聞こえ、廉が顔を上げると、そこには上司の甲斐 省吾(かい しょうご)が立っていた。  甲斐は廉が所属する課の、係長だ。  廉の失敗を一緒になって治めてくれた恩人でもある。 「冷たッ!」  省吾が、冷えた経口補水液を廉の頬に当てたのだ。  熱い体には、それがひどく心地よかった。 「反省するのはいいが、根を詰めすぎるな。体を壊すぞ」 「いいんです、壊しても。僕、どうせクビですから」  またそんな、いじけたことを言う。 「とにかく、木陰で休め」 「もう少し、がんばります」 「私まで熱中症にさせるつもりか?」  あ、と廉は気づいた。  この暑い中、省吾はスーツ姿で立っているのだ。  そこでようやく、廉は木陰に入り体を休めた。

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