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チヲカテトスルモノ?

 アスカはマントの奥でほっと息を漏らした。と同時に、聞くとはなしに聞かされた噂が頭を掠めた。    世間にその姿をさらしてからというもの、ヴァンパイアは恋愛の真似事を公然とするようになった。しかも男女の別なく、糧にし始めた。この国におけるヴァンパイアが他とは少し毛色が違うというのが、理由のようだった。  古来より、彼らのことは『チヲカテトスルモノ』として伝えられている。十字架を恐れず、日の光にも強く、二十四時間起きていられる。棺も無用だ。性別は男のみ。糧に選ぶのも、常に女というのが常識だった。  チヲカテトスルモノ―――『血を糧とするもの』とは余りに現実的だが、響きには妖しさも漂う。人間はその言葉に震え上がったが、その反面、彼らの謎めいた歴史に魅了された。それに少々吸われたところで死にはしない。ヴァンパイアに変異もしない。だからだろう。ここ最近、ヴァンパイアの糧になりたがる人間が後を絶たないという噂だった。

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