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水野センセの不運

 高校教師、水野。  容姿端麗で優しい性格の彼は男女を問わず人気があった。  夕方。  2人の男子生徒が生徒昇降口で話をしている。 「水野先生、来るもの拒まずって噂本当だったんだねー」 「意外と本格的だったし」 「うんうん、すごい上手かったよね」 「結構良かったよね。またお願いしようかな」 「そうだね。でも競争率高いから他の奴らに先越されないようにしなきゃ」  2人は興奮した様子で話しながら帰って行った。 「ふーん。来るもの拒まず、ねえ⋯⋯」  彼らが出て行った生徒昇降口の片隅で、ひとりの男子生徒が意味ありげな笑みを浮かべていた。  数日後。  その日、珍しく補習授業のなかった水野は早めに仕事を切り上げて帰ろうとしていた。  そして学校の校門を出ようとした時だ。  男子生徒が水野の前に立ち塞がった。  ネクタイの色は2年生のものだ。 「えっと、何か用かな?」  水野はその生徒の顔を見回した。 「ちょっと用事があるんだ。付き合ってよ」  目上に対する態度からは程遠い口調でその生徒が言う。  こういった口調には慣れているので、水野は何とも思わなかった。 「用事?」  その生徒に訊き返す。  すると突然、腕を掴まれた。 「な、何?」  水野は目を丸くしてその生徒を見る。 「ここじゃちょっとできないから」  その生徒はそう言ってにやりと笑うと、さっさと歩き出した。  水野は腕を引かれるようにしてそれに続いた。  そうして連れて来られた場所は、体育館脇の倉庫だった。  何が何だかわからなかった水野だが、ここに連れて来られて初めてこの生徒の目的を悟る。 「もしかして、リンチでもするつもりか?」  水野は恐る恐る目の前の生徒の顔を伺った。 「そんな事しないよ」  薄暗くてよくわからないが、にやにやと笑っているようだ。 「先生って、来る者拒まずなんだろ?」 「ああ⋯⋯そんな噂が広まってるらしいね」  訊かれて、水野はうなずいた。  どうやらリンチ目的ではないとわかって少しほっとする。 「噂の真相を探ろうと思ってさ」  その生徒は腰に手を当ててそう言った。 「君、名前は?」  水野よりも長身で体格も良さそうだ。  そして、驚くほど整った顔立ちをしている。  水野はこの生徒には見覚えがあった。  名前まではわからなかったが、いつだったか廊下ですれ違った時に、やけに整った顔だなと思ったのを覚えている。 「俺は岡本」  そう言って、その生徒─岡本は自己紹介した。 「それで、噂の真相を探るって言うのは?」  水野は岡本を見る。 「来る者拒まずなんだから、当然俺でも拒まないよな?」  岡本はにやりと笑った。 「そりゃまあ、頼まれれば⋯⋯でも、どうしてこんな場所なんだい?」  水野は戸惑いがちにうなずく。  リンチなどでない事はわかった。  しかし、リンチでないならどうしてこんな場所に連れ込まれるのか。  岡本の目的が理解できない。 「ここなら人が来る心配ないからさ」  岡本はそう言って水野の背後に回ると、両腕を拘束した。 「ちょっと、何するんだ」  水野は困惑した顔で背後を振り向こうとする。  ろくに抵抗もしないうちに両手首を倉庫にあったロープで縛られていた。  ますます彼らの目的がわからなくなり、水野は岡本を見る。  岡本は無言で笑みを浮かべていた。  なまじ顔が整っているだけに、にやにや顔は何かを企んでいるように不敵に見える。 「ちょっと岡本?これは一体どういう事だい?」 「噂の真相は体に訊いた方が早いかなーってね」  岡本はそう言うと、水野の体を突き飛ばした。  後ろ手に縛られていた水野は体勢を崩してそのまま床のマットに倒れ込む。 「おい、いきなり何するんだっ」 「だから体に訊くんだよ」  岡本はそう言って横倒れになった水野に覆い被さると、その顎に手をやった。  ゆっくりと顔を近づけ、目を丸くする水野の唇を奪う。 「んっ」  驚愕に半開きになった水野の口内へ舌を滑り込ませた。  逃げないようにしっかりと顎を固定してその口内を犯す。  しばらくは足をばたつかせていた水野だが、やがて力を抜いて動かなくなった。  岡本はそれを確認してゆっくりと唇を離す。 「君、何か勘違いしてないか?」  水野は焦った顔で岡本を見た。 「勘違いって何が?」  平然と訊き返しながら水野のネクタイを緩める。  そしてそれをしゅっと引き抜くと、カッターシャツのボタンを外し始めた。 「俺が来る者拒まずって言うのは⋯⋯あっ」  突然岡本が首筋に口付けてきて、水野の体がぴくんと反応する。 「この前昇降口で1年の連中が話してるの聞いちゃったんだ。すごい上手いとか、結構良かったとか話してたよ」  岡本は水野の胸やわき腹を撫でまわしながらにやりと笑った。 「えっ?」  水野は顔をあげて岡野を見る。 「おとなしくしてなよ。痛い事はしないからさ」  岡本はそう言って今度は水野のベルトに手をかけた。  ベルトを緩めてスラックスのファスナーを下ろす。 「ちょっと何するんだっ。やめろってっ」  水野は焦って身を捩るが、抵抗空しく脱がされてしまった。  すらりと伸びた足が露になる。 「先生、綺麗な肌してるよね。ずっと触ってみたいって思ってたんだ」  岡本はそう言いながら水野の太腿を撫でた。  水野の体が再びぴくんと反応する。 「や、あっ、やめろって⋯⋯」 「結構色っぽい声も出せるじゃん」 「何言って⋯⋯あっ」  水野の体がびくっと震えた。  岡本がトランクス越しに股間を触ったのだ。  ゆっくりとそこを揉みしだいていると、段々と硬くなってくるのがわかる。 「や、や、岡本、やめてくれ」  水野は必死に懇願するが、岡本は手を動かすのを止めなかった。  下着が次第に持ち上がってくる。 「もう反応してきたよ」  岡本はにやりと笑って下着をずらした。  半分ほど立ち上がっているそれを直に握りこんで刺激を与える。  水野の体が震えた。  岡本は水野を仰向けに寝かせると、首の下に左手を入れて支えた。  肌蹴た胸に舌を這わせながら空いている右手で水野のものを握りこむ。  完全に立ち上がった先端からは透明な粘液が溢れ始めていた。 「あ、あ、やだ、やめろ」  水野は首を振っていやいやをするが、股間を握りこまれた状態では力一杯抵抗できない。  やがて岡本は体をずらして水野の股間に顔を近づけた。  太腿の内側、足の付け根に舌を這わせる。  そして裏側から先端までゆっくりと舐めあげると、その先端を口に含んだ。 「岡本っ」  水野は目を丸くして岡野を見る。  岡本は水野のものを口に含んだままにやりと笑って見せた。  太腿を撫でまわしながら口淫を続ける。 「や、出る、岡本、やめ⋯⋯っ」  射精感が近付いてきた水野は必死で岡本に訴えるが、岡本は離れようとしなかった。  後ろ手に縛られているためその頭を引き剥がす事もできない。  岡本は舌で先端を刺激して射精を促す。 「あっ、やだっ」  水野はぎゅっと目を閉じて歯を食いしばった。  しかし我慢できずに、岡本の口内に放ってしまう。  岡本は水野の放った白濁を飲み下してからようやく口を離した。 「気持ちよかった?」 「岡本、何でこんな事するんだ⋯⋯」  息も荒く水野が睨む。 「そりゃあ、先生の事好きだし?」 「はあっ?」  しれっと答えた岡本の言葉に、水野は素っ頓狂な声をあげた。  何が何だか、訳がわからない。  水野は岡本の考えが理解できず、混乱していた。 「まあいいじゃん。それより、これで終わりじゃないんだけど」  岡本は再びにやりと笑うと、自分も制服を脱ぎだした。  そしてポケットから小さなプラボトルを出す。  中身のゼリーを手の平に取ると、それを水野の秘所に塗った。 「な、何するんだっ」  水野は次にされる事を悟って身を捩る。 「おとなしくしとかないと、痛いよ」  岡本はそう言いながらそこに指を這わせた。  蕾の周囲をゆっくりと撫で回してから、そこに指を入れる。 「あっ」  水野が小さく声をあげた。 「来る者拒まずなんだから別に初めてじゃないだろ?」 「何言って⋯⋯っ」 「結構キツイな。でも指入ったよ」  岡本は根元まで入った指をゆっくりと動かす。  水野が声にならない声をあげた。  やがて指は出て行ったが、数を増やして再び入ってきた。 「今度は2本だけどどお?」 「や、痛い⋯⋯」 「しっかり解しておかないともっと痛いよ」  岡本は2本の指をぐるりと動かした。  水野の口から呻き声があがる。  やがて指は3本に増やされた。 「い、あ、やめろ、やめてくれ」  水野は痛みに顔をしかめながら必死で訴える。 「却下」  岡本はそう言って笑うと、指をゆっくりと引き抜いた。  そして今度はコンドームを着けた自分のものにもゼリーを塗って水野の蕾にあてがう。 「や、だめだ、やめろって」 「だから却下」  岡本はすでに元気になっていたそれを、ゆっくりと水野の中に進めていった。 「う、あ、痛っ⋯⋯」  水野が苦痛の呻き声をもらす。 「力抜いててよ」  ゼリーの助けもあって、すんなりと根元まで入っていった。  そしてゆっくりと腰を動かし始める。 「あ、あ、あ、岡本、やめ⋯⋯っ」  ぎゅっと目を閉じたまま、水野は声をあげた。 「先生、何かすごい色っぽいよ」  岡本は動きを止めずに言う。  倉庫の中は水野の呻き声と卑猥な音で満たされていた。 「い、あ、痛い、やめろって⋯⋯」 「感じてないの?」  苦痛に顔を歪めている水野を見て、岡本は少し驚いた顔になる。  来る者拒まずという噂が立つくらいだから、当然慣れていると思っていた。  しかし水野の表情は演技でも何でもなく、本当に苦痛を感じているようだ。  岡本は動くのをやめて、力を失って萎えている水野のものをゆっくりと握り込んだ。  指で刺激を与える。 「あっ」  水野が苦痛とは違う声をあげた。  岡本は指を動かし続ける。  最初は力を取り戻さなかったそこも、岡本が与える刺激により再び立ち上がりかけていた。  それを見て岡本は再び腰を動かし始める。 「あ、あ、だめ、やめ⋯⋯っ」  水野が声をあげるが、苦痛の呻き声ではなかった。  それを感じた岡本は腰の動きに合わせて水野のものを扱いた。 「気持ちいい?」  岡本は水野の耳元に唇を寄せる。  水野は答えず、荒い呼吸を繰り返していた。  その唇を塞いで舌を絡める。  やがて水野は岡本の手によって2度目の吐精を果たした。 「あ、俺もイキそう」  岡本は一段と大きく腰を打ち付ける。  そしてそのまま精を吐き出す。  ゆっくりと自身を抜くと、ゴムの中に白濁が溜まっていた。  水野はしばらく荒い息をついていたが。 「何でこんな事するんだ。俺に何か恨みでもあるのか?」  何とか上半身を起こして座ると、目の前の岡本を睨んだ。 「恨みなんかないよ」  岡本はそう言いながら水野の背後に回り、両手を拘束するロープを解く。  自分の服装を整えた後、水野の後始末を始めた。  用意していたタオルで水野の体を綺麗に拭いて、下着を着けさせ、服装を整える。 「恨んでないなら、何でこんな事するんだ。これじゃ強姦だ」  水野は跡がついた両手の手首を交互にさすりながら岡本に向き直った。 「来る者拒まずとかって皆が噂しててさ。俺けっこう純粋に先生の事好きだったのに、先生は頼まれれば誰でも相手するんだって思ったら悔しくて」  岡本はそう言ってうつむく。 「待て待て、ちょっと待て。岡本、お前何か勘違いしてるぞ。俺は、生徒はもちろん誰ともこんな事した事ない」  水野はそう言って岡本を睨んだ。  岡本ははっとした顔で水野を見る。 「え?それじゃ噂って」 「英語の補習の事だよ。頼まれれば男女学年問わずに見てやってるから」  水野はそう言ってため息をついた。  それを生徒たちが「来る者拒まず」と噂していたのである。  大学時代に語学留学していた水野は、英会話が堪能なのだ。  すごい上手いと言うのは英会話の事で、補習授業の内容の事だった訳だ。  岡本は驚きを隠せないまま水野を見つめている。 「マジ?」 「大マジだよ」  水野はじとっとした眼差しで岡本を睨んだ。 「誤解だったワケ?」  岡本は困惑の表情で水野を見る。 「誤解もいいとこだ。この責任は、どう取ってくれるんだ?」  水野は大きなため息をついたあとでそう言った。 「責任?」 「そう。うら若き独身男を強姦して傷物にした責任」 「⋯⋯」  岡本は水野の本心が読めずに悩んだ。  強姦した自分を恨んでいるのか、それとも誤解だとわかって困惑している自分をからかっているのか。  しかし、強姦されたと言っている割にそれほどショックを受けている様子はない。 「さあ、どう責任取る?」  水野が促す。  岡本はひとつの可能性に賭けてみる事にした。  限りなくゼロに近い可能性ではあったが。 「じゃあ、責任取って先生を一生大事にするよ。それじゃ駄目かな」  そして岡本は大真面目な顔でそう言った。  もちろんこれは本心だ。  初めて水野を見て以来、ずっと水野の事が好きだった。  同じ男だとわかっていても、この気持ちは抑える事ができなかった。  だからこそ、例の噂がショックでこういう行動に駆られたのだ。  噂は自分の勘違いだとわかったのだが。 「バーカ。何言ってんだよ」  水野はしばらく目を丸くしていたが、やがて顔を赤くしてそう言ったのだった。  可能性はゼロって訳でもなさそうだな。  岡本は水野の反応に笑みを浮かべていた。 「本当に大事にするって」 「却下」  水野はむすっとした顔で腕組みをする。 「信じてよ。俺、本当に先生の事、純粋に好きだよ?」  岡本は猫なで声のような甘えた口調で言ってみた。 「だから却下」  しかし水野は表情を変えない。  やっぱり可能性はゼロだったのかな、と落ち込みかけていると。 「その代わり⋯⋯」 「その代わり?」  岡本は顔をあげた。 「今日はアパートまで俺を送ること。ついでに晩飯を作ること」  水野はそう言うと、ゆっくり立ち上がった。  しかしよろけてしまい、岡本が急いでそれを支える。 「それだけでいいの?」 「後は、そうだな⋯⋯今度やる時はこんな場所じゃなくて、それから縛ったりしない事。それで許す」  岡本の問いに、水野はわざと仏頂面をして見せた。 「うん。今度は無理矢理やったりしないから。ほんと、一生大事にするよ」  水野の肩を支えて倉庫を出ながら、やっぱり可能性はゼロじゃなかったな、と密かに安心したのだった。  終。

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