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④
チラッと横の陽向を見る
今まで特定の誰かと一緒にいる事も、学校に来ては誰とも喋る事もなく毎日が過ぎていたはずなのに
それが陽向のせいで一変して
コイツが寄って来ると
いつの間にか心地良いとも感じていて…
(これが友達か…)
そう思ったら、自然と顔がニヤけていた
そして学校から10分足らずの駅までの道のりは普段よりあっという間で、目の前には駅があって
「あーーッ、もう着いちゃった」
と、残念がる陽向から、はいっと傘を渡される
受け取った瞬間
それが少しだけ寂しい、名残惜しいと感じてしまった自分自身に内心焦った
「陰山、サンキュー!また明日」
「あ、あぁ…」
手を振りまくる陽向が駅の構内に向け、歩き出した、のに…
立ち止まったと思いきやクルッと方向を変え、また俺の方に向かって来る
「なんだ?どうした?」
「うんッ、陰山に忘れ物しちゃって」
「いや、ノートはさっき貰ったが…」
また傘の中に入ってきた陽向が傘の柄を掴み、傘が傾いた
「おい、どうー…」
満面の笑顔に気を取られていたのもある
肩に手を置かれ
陽向が少し顔を斜めにし、ゆっくりと近づいてきて…
「え?」
「今のは周りに見られてないからオッケーね!じゃあ陰山また明日なッ」
笑顔はさっきのまんま
いや、さっきまでの笑顔よりももっと嬉しそうで、陽向の頬には赤みが差して…
「よっしゃーーーッ」
馬鹿デカイ声を上げ、ジャンプする陽向の背中が駅構内に見えなくなるまで、今の出来事がフラッシュバックする
すでに2度されているから覚えてしまった
唇に触れた柔らかい感触
お互いの鼻が擦れる感覚
「ーーーっ、、」
3度目
そう思った途端、体温が上昇していく
陽向以上に顔が熱くなっていくのが、止められなかった
(忘れ物ってせ、せせ、接吻の事かッ)
いくら傘が壁の役割を果たしてたとしても、ここは人が往来する場所であって
人前の意味…
(まったく理解してないじゃないかアイツはッ)
その後ぶっ倒れる事は無かったが、駅員さんに
『君、大丈夫かい?30分以上ずっとここにいるけど…』
そう声を掛けられるまで、俺の体は固まったままになっていたらしい
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実は帰り道ずっとソワソワしていた陽向くん
何気に相合い傘でしたからね〜
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