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第11話
「お……まぇ、ずるぃ」
「なにが?」
「俺がお前に逆らえないの知っててそういう事……」
「意味が分からないな。逆らいたければ逆らえばいい、今の俺達には年齢での上下もなければ身分差もないんだから、全部お前が決めればいいんだぞ?」
腕立て伏せの要領で身を起こそうとすると、その琥太郎の拘束はするりと解けた。俺はそれにほっとすると同時にどこかがっかりしている自分もいて心境は複雑だ。
「お前、絶対俺の事からかってるだろ?」
「そう見える?」
寝転がったままの琥太郎はやはりけらけら笑っていて、彼の心の内はまるで見えない。けれど空に向かって両腕を伸ばした彼は伸びをするように「良い時代になったよな」とそう言った。
「好きな奴に正直に好きだと言える、こんな解放感、あの頃にはなかったもんな」
あっけらかんと琥太郎は笑っているが、今だって同性相手に告白なんてそう簡単なことではない。
俺はそんな琥太郎の横に体育座りで「昨日までふっつうに何の疑問も持たずに姫川さんと付き合ってたお前の言葉なんか信用できるか、馬ぁ~鹿」と悪態を吐いた。
「ふはっ、辛辣」
「前世から拗らせ続けてる俺の気持ち舐めんな」
「俺の方も好きだって言ってんのに」
言葉にされた「好き」という単語に、俺の心臓はこりずに飛び跳ね、真っ赤になって顔を伏せたら琥太郎にまた笑われた。くそっ。
「龍之介様はそんな事言わない!」
「昔は昔、今は今って言い続けてたのお前だよ、貴澄。俺は龍之介じゃなくて琥太郎だ」
「今になってそういうの、ホントずるぃ……」
琥太郎はやはりけらけらと笑い続ける。
こんな感じで俺達の関係は琥太郎が前世を完全に思い出したことで少しだけ形を変える事になった。
燃え盛る炎の中、顔を上げる少年の瞳は濡れこちらを見上げた。
「龍之介様、お慕い、申し上げておりました」
「清、そんな何もかも終わったような顔をするな」
「ですが……けほっ」
立ち込める煙に身を屈め、その小さな身体を抱き締める。
「人生とはかくも儚きものなのだな、だが私は自分の人生に悔いはない。清、もしお前が嫌でなかったら、来世も私と共に……」
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