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episode4-2

 黙って電車に揺られている。新宿で降りて、前を歩く北嶋について行った。  ホテルに入る時、北嶋はちらっとこちらを見て言った。 「兄貴と付き合ってるくせに俺について来て、……お前のこと、軽蔑(けいべつ)してる。終わったら、もう峰のことなんか好きじゃない。だから峰も……」  北嶋のその言葉に、こくんとうなずいた。  部屋に入ると、北嶋は大きな手で包み込むように顔に触れてきた。頬を親指で()でられてくちづけられる。 「一回だけ、言っていい?」  キスの途中で北嶋が言う。 「峰、好きだ」  絡め合った舌が音を立てている。そのままベッドに倒れ込んで、体重をかけられる。その重みがたまらなくて、首に腕をまわしてもっとくちづけをねだる。 「ん……、北嶋」  今、北嶋に押さえ込まれている。それを考えるだけで興奮してきた。 「んっ……」  半分くらい服を脱いだ状態で、唇と唇、下の欲情と欲情が重なっている。下着越しなのに、お互い硬くなっていて、求め合っていることがわかる。下着をずらされ、お互いが直接当たってこすれ合うと、すぐにぬるぬるとしてきた。  ――まだキスしかしてないのに……。 「あ、……んっ」 「峰……?」 「あっ……」  ベッドに倒れ込んでから五分か十分か、それなのにもういってしまった。  恥ずかしくて顔をそむけた。  北嶋は、放たれた液を手に取って、後ろをほぐし始めた。 「んっ、ん……」  いったばかりなのに、進入してくる指が気持ちよくて、また興奮が形になる。 「なんでここで感じてんだよ。……むかつく」  そこが気持ちいいのだと身体が自然と覚えるには、どれほどそこを使って行為をしたのか。もう数え切れないほど知哉さんに……。 「あっ」  北嶋の欲情が、いきなりあてがわれた。 「んっ、ん……」  ゴムをつけずにするのは初めてだった。ぬるっとした温かい生き物のような北嶋のそれが()いってくる。 「あ、あぁ……」 「ん……、すげー気持ちいい。なんでだよ、なんで、こんなにスッと()いるんだよっ」  上から(にら)むような目で見られる。 「んっ、ごめ……」 「謝んなよ」  唇をふさがれた。北嶋の下半身が動き出す。 「んっ、んっ、あっ、ん」  激しいリズムだった。勢いよく突かれても痛みはなく、快感だけだった。 「峰、……気持ちいいの?」 「んっ、気持ち、いい」  両足を抱え込まれた体勢で突かれる。何度も何度も打ち付けられる。 「俺、……兄貴のこと、好きなのに、……むかついてる。……峰のこと、こんな身体にして、……(くや)しいくらい、気持ちいい」  北嶋の欲情が、出たり入ったりを繰り返す。ただそれだけのことなのに、どうしてこんなに気持ちいいのだろう。 「北嶋ぁ、……あぁ、あ、んっ」 「峰……」  北嶋の顔には興奮が見られ、受け入れている内部でも肉欲の膨脹を感じる。 「あぁ、峰、……中に出していいの?」  激しい呼吸と共に北嶋が聞く。 「んっ、……わかん、ない」 「えっ」 「わかんないよ、……(じか)()れられたこと、ない、から……」 「え、……生でするの、初めてなの?」  北嶋の下半身の動きが少しゆっくりになる。 「うん」  ゆっくりになって、動きが止まるかと思ったら、急に激しい突きに変わった。 「あっ、あん」 「やべー、嬉しい」 「あっ、あっ、んっ、んんっ」 「峰の初めて、……すげー嬉しい」  速い動きが何度も繰り返され、北嶋は「んっ」と、ためらいもなく中に出した。  それは初めての経験で、後ろの最奥が温かいものを浴びて喜んだ。その衝撃で二度目の射精が訪れ、勢いよく北嶋の腹部に飛んだ。  八月二十五日。それは、この五年の間で、色々なことが起こる、節目の日だ。そこに海があってもなくても。夏の終わり。

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