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恋敵41
「信じられない! ねーえ、あなた! まさかとは思いますけどわざとじゃありませんの? これってイカサマですわよ、絶対!」
大袈裟に騒ぎ立てたことで、周囲のテーブルにいた客たちが何事かといったようにザワザワとし始めた。ところが、ディーラーの方は余裕の態度で冷笑してみせる。
「イカサマだなどと、とんでもございません。お嬢様、これがカジノでございますよ」
表向きは紳士的に微笑みながらも、素人はこれだから困るといったふうに笑う。ここからが冰たちの本番だった。
「冗談じゃないわよ! アタクシが素人だと思ってバカにしていらっしゃるのね! でも、おかしなものはおかしいのよ! あなた、アタクシたちが賭けていないところをわざわざ狙ってボールを落としているんじゃなくて?」
「まさか。いくらなんでもそんな奇跡のような技はできませんよ」
やれやれと呆れ気味でディーラーが笑う。
「そんなの信じられませんわ! アタクシにはわざととしか思えませんもの!」
冰が言い張るので、ディーラーの方も次第に迷惑だといったふうな顔付きになり、
「でしたら、次は私が先にホイールを回させていただきましょう。お客様はその後でお賭けください。それでしたらお疑いも晴れるかと存じます」
冰は目的の言葉を引き出すことに成功した。
「あら、そう? いいわ、でしたらそうしてくださる?」
「かしこまりました。ですが、お嬢様。私としてもこのようなお疑いをかけられた以上、一対一でのご勝負とさせていただきたく思いますが如何でしょう?」
これこそまさに冰が望んでいた成り行きだ。
だが、そこはおくびにも出さずに一瞬ギクっとした表情を見せてから、渋々と了承を口にしする。
「わ、分かったわ……。そ、それでよくってよ! どうせだから一目賭けで受けて差し上げるわ」
冰はプライドを突かれたといった雰囲気を醸し出すと、賭け金の方も周囲が驚いて目を剥くような金額を提示してみせた。爺や役の真田に顎でしゃくるようにしながら現金の札束をドカりとテーブルの上に積み上げてみせる。
「これを全部チップに換えていただける?」
「これはまた大胆な御方だ。よろしいのですか? 言っておきますが、一発勝負でございますよ?」
ディーラーはますますニヤけまじりで高飛車に笑う。冰も引っ込みがつかないという態度を装いつつも、プイと頬を膨らませながらうなずいた。
「よ、よろしくてよ! 元々このバカンスで遊ぶ為に持ってきたお金ですもの! それに……この程度の金額、アタクシにとってはお小遣い同然だわ!」
『ふん!』と強気の言葉を口にする。――と、ここで再び真田爺やの出番である。オロオロとしながらも、冰とディーラーの間に割って入った。
「お嬢様、お考え直しください! いくら何でもこのような大金……お父上が知ったら何と申されますやら……」
すると、ますます気に障ったとばかりに”お嬢様”は言い捨てた。
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