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極道の姐3

「そのはずだ。俺の知る限りでも取り立てて特別な関係は一切ないと記憶している。我々があの店を使う時は君江ママが直々についてくれるのが決まりとなっているし、ただ……サリーって女がヘルプで同席することは何度かあったのは事実だ。あの女はナンバーワンとも言われているような人気のホステスだ。本来、ヘルプとして他のテーブルにつくようなことはないんだが……何故か我々が行くと、決まって自分から割り込んでくるのさ」 「ナンバーワンが自分からかよ……」 「ママもその度に『ここはいいから自分のお客様を大事にしなさい』と釘を刺すんだがな。どういうわけか、我々が行く日に限って身体が空いているようでな、正直言ってあまり聞かれたくない商談の時なんかは鬱陶しくも思っていたものだ」 「そいつはまた随分と狡猾なことだな。まさかとは思うが、若あたりがお目当てだったりして……」  橘が苦笑しつつも半分は冗談でそんなことを口走ったが、清水にとってはさほど冗談で済む話ではなさそうである。苦い顔つきで漏らす溜め息がそう物語っていた。 「……そうでないことを祈るばかりだが、俺の勘では”無いとも言い切れない”というのが実際のところだ」 「はぁッ!? マジかよ……?」  橘がすっとんきょうな声を上げる。 「ついこの前も財閥令嬢に惚れられてたいへんな思いしたばっかじゃねえか。まあ、あン時は相手が素人だったし、姐さんの人望のお陰で上手いこと収束してくれたわけだが……さすがに玄人相手じゃ、別の意味で手を焼かされるんじゃねえか?」 「確かにな……。若はあの通り男前でいらっしゃるし、誰かに惚れられることがあってもそれ自体は格別驚くことじゃない。大概の女は相手にされないと分かればすぐに引くし、ましてやああいった客商売のプロが集まる銀座界隈では、若に姐さんがいらっしゃることも周知している。普通ならば客は客として、それ以上の関係を望んじゃならねえとわきまえてもいる。だが、あのサリーに限っては少々要注意人物と気になってはいたところだ」 「あー、思い出した! サリーって女、そういや俺も確か一、二度ツラを合わせたことがあったっけな! 乳のデカい、割とイイ女じゃねえか?」  率直過ぎる橘の言い草には苦笑を誘われてしまうところだが、まあ当たっているといえるだろう。 「確かに容姿の点ではそうかも知れんが――問題は中身だ。今まで世話になっていた君江ママから是非にと頼まれるならまだしも、本人から直々となるとな。しかも――ママの目を盗むような形で自分の係の客に仲介させるってのも好ましいとは思えない」

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