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孤高のマフィア75

「それは良かった。父上と兄上にはお忙しいところお手間を取らせて恐縮ですが、母上と義姉上にも少しでも楽しんでいただければ幸いです。当日は空港までお迎えに上がりますゆえ」  そうしてリモートでの会合を終えると、周もまた自らの業務に戻ったのだった。  ファミリーがやって来たのはその数日後のことである。週末の連休を前に、周の社では中庭で花見イベントが催されていた。  隼らはツインタワーにある邸の応接室で真田の接待を受けながらディナーを楽しんでいた。  大パノラマの窓からは階下でのイベントの様子が見て取れる。広い中庭を囲むように植えられた桜が満開を迎えていて、その輪の天辺には昨年真田がクリスマスツリーにと用意した樅の木が青々とした葉をつけている。その手前に小さなステージが設置されていて、周の挨拶などが行われている様子も目にすることができた。  まあ、そうは言っても高層階から望むその姿は豆粒のようなものではあるが、皆が楽しそうに盛り上がっている様は理解できる。 「マム! ほら見て! ステージでマイクを持っているのが冰よ」  風の嫁の美紅が持参してきたオペラグラスを義母へと渡しながらはしゃいでいる。 「あら、本当だわ! 冰は司会も担当すると言っていたものね! 白龍の隣でしっかり支えてくれているのが頼もしいわね!」  余談だが、美紅は結婚する前からこの義母のことを「マム――お母さん」と呼んでいて、よほど公の場でないと「お義母さん」とは言わない。理由は様々あるが、義母の香蘭自身がそう呼んで欲しいと言ったのと、美紅の両親が既に他界していて、この香蘭のことを本当の母のように思っているかららしい。嫁と姑という関係を越えて実に仲が良い母娘なのだ。そんな二人の横では父の隼と兄の風も満足げに瞳を細めていた。 「本当に白龍は大したものです。一人ファミリーの元を離れて起業し、こんなに立派な社に育て上げたわけですから。それに今では資金面でも我々ファミリーに多大な貢献までしてくれている。本当に頭が下がる思いですよ」  いい弟を持って幸せだと風が感慨深げに中庭を見下ろしている。隼はそんなふうに思ってくれる兄がいればこそ、弟である焔もこうして伸び伸びと社の経営に専念できるのだと言って息子たちを褒め称えた。 「本当に俺はいい息子を持って幸せ者だ。焔はもちろんだが、風、お前には心から感謝しているぞ」  そんな亭主たちの側で香蘭と美紅も嬉しそうに微笑み合うのだった。  階下の中庭では冰や受付嬢の矢部清美たちが中心となってイベントのゲーム大会などで大盛り上がりに湧いている。普段はなかなか会う機会がない社長の周とも間近で触れ合えるということで、彼の周りには入れ替わり立ち替わり次々と社員たちが寄ってきている。老若男女を問わず皆に慕われている様子がペントハウスで見ている隼たちにもよくよく分かるようであった。冰もまた、ステージ上でゲームの勝者に景品を手渡したりと大忙しである。近くの一流ホテルに発注した豪華なバイキング形式の食事に飲み物、景気良く振る舞われるケータリングの料理に社員たちは舌鼓し、花見の宴は大盛況の内に幕を閉じたのであった。

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