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謀反14

 一夜明けて汐留――。  鐘崎らによる必死の捜索にも関わらず、周の行方については朝になってもこれといった目ぼしい情報は上がってこなかった。頼みは事故に遭った当事者である李と運転手の宋であるが、二人共に未だ意識が戻ってはいない。事情を説明し、収容されている病院から引き取って鄧が汐留の診療室で懸命に治療に当たっていたものの、骨折と全身打撲が見られ、とにかくは意識が戻るまで待つしか術はなかった。  三連休だった為に社の業務に関してはひとまずのところ支障はなかったので、それだけは幸いといえた。  捜索の本拠地を汐留の周邸に構えて鐘崎組からも通信機材などが様々持ち込まれ、鐘崎や紫月もしばらくは泊まり込みで情報の収集に当たることとなった。  そんな中、昼前になると、丹羽ら警察の捜査で犯人が乗り捨てたと思われる救急車両を装った車が見つかったとの連絡を受けて、鐘崎は源次郎と共に現場へと出向いた。紫月には汐留に残ってもらい、冰の支えになるようにと側に居てやることを頼んで出掛ける。現場に着くと既に丹羽が待っていて、車内から周の物と思われる衣服一式が見つかったとの報告を受けた。 「確かに氷川のスーツに間違いねえな」  見覚えのあるネクタイの他にも普段周が贔屓にしているテーラーで仕立てられたスーツは、裏地に刺繍されたネームとサイズからしても周の物で間違いない。鐘崎は他にも残留品がなかったかどうかを尋ねると、案の定といったところか周の刺青に取り付けてあるGPS付きのピアスがペットボトルの飲み物の中に沈められているのが放置されていた。  昨夜、事故の一報を受けてまず最初にこのGPSを探索にかけたが繋がらなかった。スマートフォンの位置情報は当然潰せるとしても、背中のピアスにまで気がついたとなると、それはプロの仕業を意味していると思われる。  このピアスにGPSが仕込まれていることは鐘崎をはじめとするごく僅かな側近たちしか知り得ない。少し前までは紫月にさえ言っていなかったのだから、ひょっとしたら冰にも知らされていないかも知れない。  そんな物を即座に見つけて潰したとなると、裏社会の事情に詳しい者の仕業としか考えられないのだ。 (やはりか。しかし下着まで引っ剥がすとはな……。敵にとって一番の危惧は行き先を知られたくねえってことか……)  これはもう同業者で間違いないだろう。しかも十中八九は香港のファミリー絡みと思われる。  鐘崎は丹羽に頼んでこれら一式を持ち帰らせてもらうことにした。  むろんのこと鑑識作業や科学捜査などで必要なのは理解できるが、今は一刻を争う緊急時だ。事情を知らない警察の捜査に任せていては手遅れにならないとも限らない。無理を承知で頼んだものの、なんと丹羽の方でも思いを汲み取ってくれたわけか、快諾してくれた。

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