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謀反20

「男の名前は陳か。出身地は中国の雲南省、実家は唐辛子農家だそうだ。しかもこの陳は冰の売買に首を突っ込んだことを後悔してか、自分からファミリーを抜けたいと申し出たそうだ。噂によるともう裏の世界は懲り懲りだと言って、堅気になることを強く望んでいたそうだが……」 「ふぅん? そんな男がわざわざ報復の片棒担ぐようなことをするかね」 「まあ堅気になりてえってのは見せ掛けだけのホラだったということも考えられるが」 「けどその陳ってヤツは故郷の実家に帰ったってんだろ? 博多に行ったところでヤツには会えねえだろうによぉ。それとも藩って舎弟は陳が実家に帰ったことを知らなかったってわけか?」 「さぁ、そこまではなんとも言えんが……。ただ気になるのは博多といえば例の香山という男のことだ。冰を拐った実行犯はまだ服役中だから除外するとして、香山ってのは既にシャバじゃなかったか?」  とすれば、またしても香山が何かしら企んでいて、その為に今度は羅たちを雇ったということだろうか。 「羅辰はファミリーの中でもそれなりに一目置かれていた男のようだからな。いくらなんでも香山のような堅気が簡単にコンタクトできる相手じゃねえか……」  だが舎弟の藩がわざわざ博多に出向いていることは気に掛かる。 「念の為だ。香山が現在何処に住んでどうしているかを洗う必要があるな」  鐘崎はそちらの件でも調べに掛かることにした。  その結果、香山の暮らしぶりは容易に割れたが、ここ数日の間は家に帰っていないらしいことが分かってきた。羅辰たちの企みとは全くの無関係という可能性もあるが、舎弟の男が博多を訪れていることはやはり気に掛かる。 「もしかしたら羅辰の方から香山を抱き込んだとも考えられるな……。香山が氷川に恋情を抱いていたことを陳あたりから聞きつけたのかも知れん」  問題は香山のような素人を巻き込んだとして、羅に何の得があるかということだ。DAという危険薬物を使って周の記憶を奪った目的も気掛かりだ。 「ヤツら、何を企んでいやがる……」  さすがに手詰まりとなり、ここから先は彼らの目的が掴めない事には動きが取れそうもない。  そんな折、医師の鄧から李と運転手の意識が戻ったと連絡が入り、鐘崎らは急ぎ医務室へと向かった。  運転手の方は骨折の他にも外傷があり、未だ重症であることに変わりはなかったが、李の方はそれに比べればまだ軽かったようだ。リクライニングができるベッドの上で半身を起こしながら、冰に向かって平身低頭で謝罪の言葉を口にした。

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