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謀反60
「だがな、ロナルドの言うには鉱山での仕事が性に合ったそうで、引き続きこの仕事に就いていたいと言うんだ」
これには隼も風も驚かされてしまったのだが、ロン本人がそうしたいと言うものを無理に解雇するわけにもいかない。ロンにはこれまで以上の報酬を約束して、鉱山の任務を任せることにしたのだそうだ。
「そうですか。あのロンが……。お陰様で俺も記憶が戻ったことですし、近く現地に行って直接礼を述べたいと思います」
「ああ。そうしてやってくれればロナルドも喜ぶだろう。なにせヤツは今も冰に心酔しているようだからな」
ロナルドことロンとは周兄弟の拉致をきっかけに知り合ったわけだが、本当に変われば変わるものである。今ではすっかり頼もしい鉱山の男となった彼に、誰もが心温まる思いでいるのだった。
「白龍、ロンさんの所へは俺も一緒に行くよ。チームの方たちにもちゃんと御礼を伝えたいし」
冰もそう言ってくれるので、近々夫婦揃って鉱山を訪れることにした。
「だったら俺と紫月も同行させてもらうか。俺たちもすっかり世話になったことだしな。帰りにはマカオの張の所にも寄れるし、マカオまで行きゃ香港も近い。親父さんたちのところにも顔を出せる」
鐘崎の機転に隼らも喜んだ。
「遼二と紫月が一緒に行ってくれるなら心強い。香港では充分寛いでもらえるようにして待っているぞ」
「でもホント、俺たちっていい方たちにご縁をいただいて幸せだよね。ロンさんといいマカオの張さんといい、皆さんのお陰で今回もこうして無事にいられるんだもん」
冰がニコニコとしながら感激している。だが、彼らとの出会いを考えれば必ずしもいいきっかけだったわけではない。マカオの張は身勝手な理由で冰を拉致したわけだし、ロンは周兄弟と鐘崎を亡き者にしようと企んだような輩である。そんな彼らと今はこうして固い絆で結ばれるようになったのも、周隼の懐の深さと冰や周のあたたかい人間性の賜であろう。誠、縁とは不思議なものだ。きっかけはどうあれ、彼らとこうして絆を持てたことに、誰もが良かったと思うのだった。
「さあ皆様、メインのお料理ができましたぞ。今宵は香港から坊っちゃまのご家族も駆け付けてくださったことです。純和食をたっぷりとご堪能くださいまし」
真田が出来立ての料理を運んで来て、皆は再び快気祝いの膳を楽しむことにする。
和やかな歓談ですっかりと夜も更けて、周と冰も是非にと言うので、鐘崎と紫月もファミリー同様今宵は汐留に泊まっていくこととなった。
周と冰にとっても記憶が戻って初めての夫婦水入らずの時だ。昼間は皆への報告が何より優先だった為、二人だけで向き合うのが今になってしまったわけだが、ようやく長かったこのひと月余りの不安が解消された喜びを分かち合える二人であった。
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