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幸せのクリスマス・ベル1
「わぁ! 街はもうすっかりクリスマスですね!」
「だな! 今年のツリーもでかいなぁ」
十二月の始め、華やかなイルミネーションに彩られた銀座の街を歩きながら感嘆の声を上げる。冰と紫月はお付きの源次郎と共に買い物へと繰り出していた。お目当ては周と鐘崎に贈るクリスマスプレゼントを選ぶ為だ。
今日はその旦那衆二人が警視庁の丹羽に呼ばれて打ち合わせに出掛けて行ったので、サプライズの贈り物を探すのに打ってつけなのだ。
もちろん旦那衆が嫁たちを二人だけで外出させるはずもなく、護衛役として鐘崎組番頭の源次郎が付いてきてくれたのである。
「すまねえな、源さん。付き合わせちまって」
「いつもお世話になります」
二人から礼を述べられて、源次郎はとんでもないと恐縮した。
「私の方こそいい気分転換をさせていただいて! 仕事を離れてウィンドーショッピングというのもいいものですな」
源次郎は言葉通りニコニコと楽しそうだが、実際にはこれも大事な仕事の内である。冰と紫月の二人に何かあれば一大事だからだ。正直なところ普通に任務に付いているよりも責任は重大だし、いつ何時なにがあってもすぐに対処できるようにと気を研ぎ澄ましてはいるわけだが、そこは精鋭の源次郎である。周囲にはきちんと目を光らせながらも柔和な空気を崩さないのもまたプロの成せる技なのだ。
「ところでお二人はもう何を贈られるか決まっておいでなのですか?」
「うん、一応は! 今年はさ、冰君と相談して遼と氷川にお揃いの小物を贈ろうかって思ってるんだよね」
「ほう、お揃いでございますか。若たちも喜ばれるでしょうな」
して、いったいどんな物を贈られるので? と、興味ありげにしている。
「ん、シガーケースをさ」
つまり煙草入れである。
「遼も氷川も煙草吸うべ? この前ちょっとレトロな映画を観てて思ったんだ。昔の紳士が洒落たシガーケースから葉巻を出して吸ってる場面がカッコ良くてさぁ。ああいうの、遼と氷川なら似合うんじゃねえかと思って冰君に相談したんだよ」
「俺も紫月さんから聞いて素敵だなって思いまして! そういえばいつもは買ったままの箱から出して吸ってるよなって。まあ家にいる時はそれでもいいんですけど、ちょっと出掛けた時とかにお洒落なケースから出したりしたら粋だなぁって思ったんですよ。きっと白龍や鐘崎さんがやったらすっごいサマになるんじゃないかって!」
冰曰く、そんな姿を想像しただけでテンションが上がりまくったらしく、今年のプレゼントはそれにしようと即決したのだそうだ。
「ね、こういう街角とかでロングコートを着た白龍とか、ホテルのラウンジのような所でスーツをビシッとキメた鐘崎さんがシガーケースからタバコを出してる仕草なんて……ぜーったいカッコいいと思うんですよー!」
まるで瞳の中からハートのエフェクトが飛び出してきそうな勢いで冰はワクワク顔だ。
「はは! まさに俺が観た映画の通りだなぁ」
脳裏に旦那たちの姿を思い浮かべては紫月も嬉しそうにする。
まあ確かに彼らなら似合う仕草だろうと源次郎も納得である。それ以前に、亭主のそういった姿を想像して萌えているこの姐様たちの愛情が、源次郎にとってはなにより嬉しいものであった。
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