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カウント・ダウンを南国バカンスで12

「きっと照れ臭かったんだろうがな。つい本音が口をついて出ちまったもんで、その後はひと言も喋らねえまんま一之宮を家まで送ってったっけ。カネもああ見えて照れ屋なところがあるからな」  周は懐かしそうに笑った。 「それからだったかな。以後、女たちがカネに群がって来ても一之宮は寂しそうな面を見せなくなった。それどころか、愛想のねえカネに代わって女たちの機嫌を取ってやったりするようになってな。持ち味のフレンドリーさを生かして上手く断ったりかわしたりするようになった。一之宮がそんな調子だから二人の間がギクシャクすることもなくなってな。きっと一之宮はカネの本気を知ったことで自信がついたんじゃねえか」  想いを言葉に出して告げ合わずとも、この男は本気で自分を想ってくれている。そんな覚悟のようなものを感じ取ったのかも知れない。 「そっか。だから紫月さん、あんなに余裕でいられるんだね。鐘崎さんのこと信じてるんだよね」 「お前ももっと俺を信じろ」  クシャクシャっと髪を撫でながら周は笑った。 「し、信じてるよ! 俺も……白龍が俺を大事にしてくれてるのちゃんと解ってるんだ。ただ今回は知らない女の人たちが白龍に好意を持ってるんだなぁっていう場面を目の当たりにしたら……何だかすごくドキドキしちゃっただけ」 「まあそうかもな。普段は女が寄って来るようなシチュエーションに遭遇することもねえからな。お前にとってはカルチャーショックだったのかもな」 「ん、そうだね。でもちょっと思ったんだぁ。女の人たちにモテてる白龍はやっぱりカッコいいなって。そんな素敵な人が俺の旦那様だと思ったらさ。一緒にいられることがすごい幸せなことなんだって、改めて身に染みたっていうか……」 「幸せか?」 「うん! うん、すごく……!」  冰は今一度広い胸の中にうずくまるようにしがみつくと、 「ありがとう白龍。一緒にいてくれて。大好き……。こんな……子供の俺だけど……」 「冰、だからなぁ……あまり可愛いことをしてくれるなと言っているだろうが。こんなんじゃまた……」  また抱きたくなってしまうだろうが。 「これじゃ明日起きられんぞ」 「いいよ。俺がちゃんと起こしてあげるもん」 「バッカ。おめえの方が体力ねえんだから!」 「えへへ。じゃあ白龍が起こしてよ」 「分かった。そん代わり」  もう一度だけ俺を受け入れてくれたら――な?  ニヤっと不敵に笑った唇を塞ぐように、冰は自ら進んでキスをした。 「だから、そう可愛いことをしてくれるな!」  長い長い夜が甘くゆったりと更けていったのだった。 ◇    ◇    ◇

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