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カウント・ダウンを南国バカンスで16
「帰ったら雑煮食うぞー!」
「お屠蘇もあげなきゃですな!」
「いいね。日本の正月を楽しむとするかぁ」
ホテルのエレベーターに乗りながら和気藹々とした朗らかな会話に包まれ、楽しかった南国リゾートの夜が更けていく。
その頃、スマートフォンで写真を確認した女たちが、苦虫を噛み潰したような表情で唖然としていた。
「うっそ! 信じらんないー! アタシたちだけしか写ってないじゃん!」
「なに、あのクソジジィ! 誰がアタシたちだけ撮れって言ったのよ! 腹立つー!」
「せっかくの超絶イケメンてんこ盛りだったのにさー。今年一番のSNSに載せようと思ったのに!」
地団駄を踏んでいたのは言わずもがなである。
「ヘックショ!」
源次郎が大きなクシャミをしたと同時に、
「お、さてはバレたな」
紫月が悪戯そうな笑顔でちり紙を差し出すのを受け取りながら、
「おおかた、なにあのクソジジィー! とでも言っているところでしょうな」
『イヒヒ』と得意気に源次郎が笑う。
「はは! ンなこと言ってっとー! 今頃さっきの姉ちゃんたちもクシャミしてっかも知れねえぞー」
紫月がそう言ったと同時に、女たちの方でも、
「……ックシュン!」
「ヤダ、風邪ぇ?」
「まさか! こんなあったかいのに」
風邪ではなく噂話ですよ、お嬢様方! そんな想像をしながらウィンクでおどけてみせるユーモアあふれる源次郎に、皆一斉に朗らかな笑いに包まれたのだった。
ナンパの嵐などハプニングもあったが、それぞれにとって羽を伸ばせたバカンスとなった。とかく冰にとってはヤキモチに翻弄されたハラハラ感はあったものの、改めて素敵な亭主といられる幸せを噛み締めるいい機会にもなり、少しだが大人に近付けたことだろう。
「また来ような」
「うん。うん……!」
あなたと――、
お前と――、
一緒に!
カウント・ダウンを南国バカンスで - FIN -
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